サファイア12 ラグビー少年

 

赤木大河は、夕暮れ、道端にフラフラで疲れ切った一人の少年を見た。

少年はうなだれ、とぼとぼと下を向き歩いていた。

赤木大河は彼のことがとても気になった。

気づくと、サファイア12になって、彼の心の中を見ていた。

サファイア12は少し驚いた。

彼の心の中は、真っ黒であった。

絶望でおおわれていた。

サファイア12は一時悩んでいた己の若き日々を思い出していた。

そう、あの頃。

赤木大河は若い頃、一人自分のココロと戦っていた。

サファイア12も赤木大河という一人の人間だ。

弱い弱い人間でココロは最大の弱点であった。

赤木大河は、自分の最大の敵は、自分自身だと以前から気づいていた。

最大の味方でもあるが。

ココロは無限で、天使で、悪魔で、慈愛で、残酷であった。

そういったココロの渦の中に赤木大河はいた。

あなたのやさしさが、君の心からの笑顔が俺を救ってくれる。

声をかけてくれる、それだけで頑張れる。

人は一人では生きてゆけない。支え合って生きてゆく。

つらい時は泣いてもいいんだよ。

だけど、あの娘には涙は見せたくない、ただ、こっそりと一人で泣きたいんだ。

たった一人のロンリーウルフ。

それが俺なんだ。

弱いくせに、いつも意気がって、いつも強がっている。

たった一人のロンリーウルフ。

たった一人のロンリーボーイ。

自分の傷も見せないで、自分を大切にするのを忘れがち。

だから、一歩、道を踏み間違えないように、明日を明るく生きたいんだ。

今日を一生懸命に生きようじゃないか。

今日を生きてこそ、明日がある。

サファイア12は若きあの頃の心意気を知らず知らず少年にサファイアビームの強い波動で送っていた。

いつか師匠が赤木大河に言ったことがある

「いくら周りが応援してもダメな時がある」

「どういうことです?」

「当たり前の話だが、いくら援軍があっても、本人が戦わないと、頑張らないと勝負には勝てない。大河、頑張って欲しいんだよ」

夕日が今、落ちようとしていた。

少年は何かが変わったように元気になってゆく。

彼の心と夕日がオーバーラップして、美しく輝いた。

『今日を一生懸命に生きようじゃないか。今日を生きてこそ、明日がある』

今の少年の姿を見て、サファイア12は、なんとなく安心した。

彼は昔の俺みたいに、きっとはい上がるだろう。

そして、俺みたいに、藍子のような素晴らしい恋人を見つけて欲しい。

人はきっと人生を生き抜く能力を授かって生まれている。

※ ※ ※ ※

 少年はいつしか青年になった。

毎日毎日汗まみれのラグビーの練習をやっていた。

また、彼には天才的な天性の素質もあった。

信じられぬことに彼はラグビーの日本代表となり、ワールドカップの試合にフル出場していた。

体と体の激しいぶつかり合い。

外国のチームはやはり、凄い。

こっちの体がぶち壊れそうだ。

だが、しかし、この試合に勝てば予選クリアだ。

彼は栄光の日本代表の一員なのだ。

あの少年の時、自分の人生をあきらめなくて良かった。

『今日を一生懸命に生きようじゃないか。今日を生きてこそ、明日がある』

例えば、決勝トーナメントに進んで、奇跡が起これば優勝だって、夢じゃない。

日々のたえまない努力練習の積み重ねで、ここまで勝ち上がってきた。

ひたすらボールをまわし、ひたすら走り、そして、一瞬のスキをついて、トライする。いつも、この夢を追い続けてきた。

昔、少年だった青年は、ひたすら、ボールをまわし、走り続けた。

ひたすら、夢を追い続けてきた。

あの時、少年が気づかないままのサファイア12との一期一会。

人生のきっかけはいつも、気まぐれであるが、すべては、絶え間ない彼の努力の賜物であった。