サファイア12 幻の大陸
川島藍子は、中条律子の家を訪れていた。
「それで、大河さんが行方不明になったのは、いつ?」と律子。
「ちょうど一週間前。私達が同棲し始めて、こんなことは初めてです。以前、大河がお世話になった律子さんに聞けばヒントがあるかもしれないと思い切って突然おじゃましました」
「そうですか。実は、私も全く、わからないのです。ただ大河さんから藍子さんと、今とても楽しい日々を送っていると聞いていたところです。………………」
中条律子はアンモナイト(石術のシンボル・パワーの源)を見つめた。
「藍子さん、もしかすると何かわかるかもしれません」と律子は藍子に言い、部屋の片隅にあるアンモナイトを抱いてきた。
川島藍子は、アンモナイトが石術において、シンボルでパワーの源であることを知らない。
「さぁ、藍子さん、二人でいっしょに、このアンモナイトを抱きしめて、大河さんのことを一心に念じましょう」中条律子は意を決して藍子に言った。
藍子は大河の恩人、律子の言葉通りに、律子と二人でアンモナイトを抱きしめ、大河の安全を心から念じた。
しばらくして、不思議な感覚が訪れて、何か黒い長いトンネルの中に二人は入ってゆくような気持ちになり、意識を失った。
※ ※ ※ ※
二人が目を覚ますと、目の前に赤木大河がいた。
「大河、一体どういうこと?」と川島藍子が言う。
「いや、その前に、二人がどうして、ここに来たのか教えてくれないか」と赤木大河。大
河は二人に事情を訊く。
「すべては、俺を心配し、探して来たのか。……すまん」大河は語り出した。
「実は、仙人デュパンにいただいた二つの『サファイア』を利用して、タイムマシン
機能に挑戦しているのだが、何度も失敗して、上手くいかない。そこで、基本にかえ
って、奥義『飛鳥(トブトリ)』の技を磨き、ふとバミューダトライアングルで飛行をし
てみようと思いついたんだ。そして、奥義『飛鳥(トブトリ)』でバミューダトライアン
グルを飛行していたら、信じられんことに変形したワームホールの扉を突き破ったみ
たいで、この地にきてしまった」
「というと、ここはどこなの?」と周りの華やかな街並みを見ながら、中条律子は訊く。
「うん。ちょっと待って。ところで、俺が行方不明になって、とのくらい経つ?」と大河。
「ちょうど一週間よ」と藍子。
「ふーん。…………俺の計算では、一ヵ月だ。どうやら、時間の感覚が俺の中でおか
しく変になっているのか…………」
「……………」律子が何か言おうとした瞬間、ものすごい音が六回した。事実は六つ
の火山の大噴火の音であった。三人はゆらつく。周りの人々もゆらつき、そして、驚
き、しばらくして逃げまどう。
「何があったの?」と律子と藍子。大河は、サファイア12の能力で火山の様子を見
る。
六つの火山からそれぞれドクドクと溶岩が凄い勢いで流れ出ている。ヤバイ。ヤ
バ過ぎる。サファイア12はいつしかアンモナイトを手にしていた。
「助けて!」と五才くらいの男の子がサファイア12に抱きつく。
ヘタをすれば危ない。あまり時間がない。
サファイア12は、中条律子・川島藍子・少年の四人(自分を含め)と一体になり、
今まで何度も奇跡を起こしたアンモナイトの力を借りて時空を越えた。
※ ※ ※ ※
一八八四年。ドイツ南部。ミュンヘン。
またまた新しい土地に赤木大河、中条律子、川島藍子は呆然と立ち尽くす。
「やはり、アンモナイトに助けられたか」と大河。
「大河さん、さっきの火山の場所は?」再び律子が訊く。
「うーん、あくまでも………推測だが……アトランティスかも………」
「えー、あの『幻の大陸』………信じられないよ……」と藍子。
優れた文明で栄えた大陸が一夜にして海の底に沈んでしまったという・・・・・・・・・・・・
律子は絶句。
「じゃあ、ここは………」と藍子。
「あァ、俺のサファイア12としての能力を駆使して、さっきから調べているんだが、やっとわかったよ。19世紀後半のミュンヘンだ。たぶん、この時代がこの少年を必要としているのかな?」
サファイア12は眠っている少年を近くのベンチに横に乗せ、幸せのオーラで少年を光
り輝かせた。
サファイア12は律子と藍子の方に振り向いた。
「俺達は俺達の時代に戻ろう。アンモナイトを使って」そして、三人は再び時空を越えた。
いつしか、少年が学界に相対性理論を発表したことを赤木大河ことサファイア12ら三人は知らなかった。