サファイア12 中東の大テレポテーション

 

 ある朝、中条律子が大和川辺りを歩いていると、二十五歳くらいの男が倒れていた。律子は救急車を呼び、男を県立東野病院へ運んだ。しかし、男は十日経っても意識不明のままであった。男の身よりも知れぬまま、律子がずっと看病した。

 ある夕方、律子が病院を訪れると、男が目を覚ましていた。男は自分自身の名を語った。彼の名は赤木大河。律子はホッとするが、意識が戻っただけで、むしろ、容態は悪化し徐々に衰弱してゆく、大河は死を覚悟したのか、律子にこう言った。「外が見たいんだ」

 律子は大河の願いを叶えようと、大河を退院させ律子の自宅に連れて帰った。一晩が過ぎた。律子が目を覚ますと、別人のような元気いっぱいの大河がいた。なぜか家にあった置物のアンモナイト(石術のシンボル・パワーの源)を抱きしめていた。

「ありがとう、律子さん。俺は一命をとりとめたみたいだ」

「・・・・・・・・・・・・・・・よかった」律子は嬉しそうに言う。

だが、いまいち律子の顔色が優れない。急に律子が泣き出した。

「どうしたんだ、律子さん」大河は驚いた。

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律子の父、周一は世界を駆け巡るジャーナリストで、今、中東に取材に行っていた。律子は、昨日にメディアによって、周一がDL国(死の国)に人質として捕まり、政府が莫大なお金を支払わないと、後一週間で、殺されるというニュースを知ったばかりである。

 大河は命の恩人、律子の父を助ける方法は何かないものかと考える。実は大河は、宝石術という太古から伝わる石術拳法の使い手であった。結構その道では名の知られた主に『サファイア』の使い手。秘密組織『ジュエル』のコードネーム、サファイア12。

 なぜ、大和川の川辺りで瀕死の状態で倒れていたかというと、伝説の『サファイア』を仙人デュパンという男から盗み出そうとして、仙人デュパンに『雷落し』という技で逆に返り討ちにあったのだ。そして、倒れているところを律子に救われたのだ。

 赤木大河ことサファイア12は考える。やはり、瞬時移動が可能になる伝説の『サファイア』があればなんとかなるかもしれない、しかし、今の俺では仙人デュパンには歯が立たない。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 ここは仙人デュパンにお願いをしてみるか。左手の人差し指の銀のリングが光る。リングには小さなサファイアが埋め込まれているのだ。大河は『気』を集中させハッ!と叫んだ。宝石サファイアから発せられたブルーの光が大河を包み、大河は大空へと飛び上がった。目指すは、仙人デュパンのいどころ知らぬ天空の「カォー城」だ。探して探してやっと難攻不落の「ガォー城」を見つけた。仙人デュパンはサファイア12を見て不敵に笑う。

「流石だな、サファイア12。私の『雷落し』を食らって、生きているとは・・・・・・・。だが、サファイア12、今度、私と戦えば確実に死ぬぞ」

「いや、あなたに勝てるとは思っていない。だが、どうしても、あなたが持っている伝説の『サファイア』が欲しいのだ・・・・・・・・・」

 赤木大河は、中条律子とその父周一が置かれている運命を語った。そして、瞬間移動の技が使える伝説の『サファイア』があれば、ジャーナリスト中条周一の命を救えるかもしれないと。

「サファイア12、都合のいい話だな。伝説の『サファイア』をよこせと。それに我ら一族は石術使いと敵対関係にある。石術拳法の開祖ブラッド・グーに我らの祖先の一人が殺されているのだよ。・・・・・・・・・・・・・・・・・だが、私も『人』いや『仙人』の子。涙を流すこともある」と言うとサファイア12の前から仙人デュパンと「ガォー城」が消えてなくなっていた。伝説の『サファイア』がサファイア12の首にかけられていた。

 律子の家に戻った赤木大河。なんと「ガォー城」との行き帰りで五日を費やしていた。

「大河さん、一体どこへ行っていたの?」

「律子さん、俺が何を喋っているかわからないと思うが、実は俺は特殊能力を持っていて石術拳法を使う。たった今、瞬間移動が使える伝説の『サファイア』を手に入れてきた。これから、このサファイアを使い、中東にテレポテーションして、君のお父さんの居場所を探して、お父さんを助け出して見せる」

「・・・・・・・・・・・・・・・・」律子は話を理解しているのか、していなのか。

「もう、時間がない。後、二日で処刑される」

 律子の前から、赤木大河ことサファイア12が消えた。

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「流石に暑いな」汗を流しながら、大河は周りを見渡す。中東に来て、しばらく、天性の勘で彷徨っているのだが、大河でも、周一の居場所が掴めない。もう時間がないはずだ、後いくら時間が残されているのか?時間の感覚がなくなっている。大河は焦っていた。時間との激しい闘い。律子の美しい顔が目に浮かぶ。俺も、かつて秘密組織『ジュラル』でサファイア12と怖れられた男。あの頃の自分自身を信じるんだ。俺ならやれるはずだ。かつて、身体を三分身して瞬時に動くという技、『瞬時拳亜流三分身』という奥義を編み出した時を思い出せ。そして、今はもう、さらに修行して、『瞬時拳亜流五分身』をマスターしているのだ。伝説の『サファイア』に向かって、心を一点に集中させ、大河は自分自身をシンクロさせる。人差し指の小さなサファイアと胸の大きなサファイアが激しくブルーに共鳴した。・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・気づくと、無意識に瞬間移動していた。

 かすかに人が見える。ヤバイ、今にも人が処刑されるところだ。サファイア12は、さらに瞬間移動。銃声が鳴り響き、左足に激しい痛みを感じつつ、右手である人物を持ち上げ、大・大・大テレポテーション!そして、赤木大河ことサファイア12は気を失った。

気づけば、赤木大河は県立東条病院のベッドの上。なぜか、病室にアンモナイト。また、中条律子が見守っている。そして、もう一人の男。俺は、中条周一を救ったのか?すべては中条律子の百万ドルの笑顔が物語っていた。