8時間以上眠るアスリートは怪我や疾病罹患のリスクが低い | 兵庫県の陸上教室 ELITE  土手 啓史

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土手です。兵庫県の伊丹、三田で陸上教室、伊丹のジムでパーソナルトレーニングを行っています。
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日常を発信していきたいと思います。

8時間以上眠るアスリートは怪我や疾病罹患のリスクが低い ニュージーランドの学生調査


トップアスリートである選手でも「練習や試合で蓄積した疲労の回復について選手が『最低でも8時間の睡眠を確保しようとしています』と回答する選手は少ない」とよく耳にします。

疲労回復を目的としたクールダウンやアイスバス(水風呂による疲労回復法)、水分補強などの重要性が広く認知される一方で、睡眠という「身近な」ものについては見落とされやすいです。

 育成年代では、睡眠が平均8時間以下の選手は同8時間以上を確保している選手と比べて「ケガのリスクが1.7倍になる」という研究があるように、睡眠不足はケガに直結します。

また、特に6時間以下の睡眠に着目すると「疲労を原因とした負傷」のリスクが飛躍的に高まることも主張されています。

サッカーだけではなく、バスケットボールや陸上競技などでも同様の傾向が示され、様々なスポーツにおいて重要視されている睡眠についての記事を書いていきます。

今回は睡眠時間が8時間以上で睡眠の質が高い学生アスリートは、ストレスが少なく、怪我や病気になりにくいという研究結果が報告された文献を見つけました。


また、睡眠時間や睡眠の質と、トレーニングの質などのさまざまな評価指標との有意な関連が明らかになりました。


エリート学生アスリートの睡眠やトレーニング関連の情報を収集


トレーニングは、その時点の身体の対応能力を超えたストレスを生み出すように設定され、それに対する適応と適切な回復によってトレーニング効果が生まれます。


回復が不十分な場合、ストレスが蓄積し不適応やパフォーマンスの低下につながります。


睡眠はトレーニング後の回復に欠かせず、睡眠時間の短縮や睡眠の質の低下によって、免疫能低下、耐糖能障害、倦怠感の増加などが生じます。


学生アスリートは、トレーニング以外に就学や生活の変化によるストレスがかかり、睡眠時間や質への影響が現れやすいと考えられます。


この研究では、大学生アスリートの睡眠やストレス、トレーニング量などの変化に関して、後方視的な縦断的調査が行われました。


対象

18~23歳の学生82名


スポーツ奨学金プログラムに参加しており、ニュージーランドの代表、または国内大会レベルにあるエリートアスリート。


競技種目は、ラグビー28名、ネットボール11名、バスケットボール13名、陸上競技3名、ボート2名など。


収集された情報は、睡眠時間、トレーニング時間、10段階での自覚的運動強度、主観的な評価に基づく睡眠の質、気分、エネルギーレベル、学業上のストレス、学業の評価、トレーニング強度、トレーニングの質、筋肉痛など。


睡眠時間8時間未満では、トレーニングの質や筋肉痛にも影響する可能


対象者の睡眠時間は男性8.2±1.0時間、女性8.2±1.1時間でほぼ同等であり、年間を通して睡眠時間8時間以上の日が、男性は79%、女性は82%を占めていた。睡眠の質で性別による差はありませんでした。


睡眠時間が8時間未満の日と8時間以上の日で比較すると、気分やエネルギーレベルの主観的評価に有意差があるだけでなく、筋肉痛の程度やトレーニングの質にも差が生じることがわかりました。


男性での検討


男性55名のうち、睡眠時間が8時間未満だった日は合計1,137日記録されており、8時間以上の日は4,624日記録されていました。


両者を比較すると、睡眠時間が8時間未満の日は、気分、睡眠の質、エネルギーレベルが不良であり、8時間以上の日との比較で有意差がありました。


また、筋肉痛や学業ストレスも、睡眠時間が8時間未満の日のほうが有意に不良だった。トレーニングの質も、有意水準は境界値ながら、睡眠時間が8時間未満の日のほうが不良でした。


女性での検討


女性27名のうち、睡眠時間が8時間未満だった日は合計746日記録されており、8時間以上の日は2,578日記録されていた。


両者を比較すると、睡眠時間が8時間未満の日は、気分、睡眠の質、エネルギーレベル、トレーニングの質が不良であり8時間以上の日との比較で有意差がありました。


また、筋肉痛や学業ストレス、自覚的運動強度も、睡眠時間が8時間未満の日のほうが有意に不良でした。


怪我や疾病リスクも睡眠時間や睡眠の質と有意に関連


調査期間中に280件の疾病罹患が報告され、その大半(192件)は風邪とインフルエンザ


また怪我は253件報告され、その多くは下肢関連(legが110件、foot/ankleが32件)。


睡眠時間が8時間以上の場合、怪我や疾病のリスクが2割低く、睡眠の質が高い場合は4割リスクが低いことが明らかになりました。


「大学で学びながらエリートレベルの競技を続けているアスリートは、多くのストレス負荷がかかっている可能性があります。


睡眠時間が8時間で質の高い睡眠を維持している学生アスリートは、ストレス関連の問題に苦しむリスクが低い一方で、睡眠不足を含む過度のストレスのある学生アスリートも存在します。


ストレスと睡眠の問題によって生じる症状や兆候について、学生アスリート本人とコーチ、トレーナーが理解を深めることが、不適応を減らしアスリートとしてのパフォーマンス向上につながる可能性がある」とまとめています。


文献情報