「フェスよっ!」

「うわっ!?」「…」

「どうしたんだよ アスカァ」

「かなりおひさだったから 大声でアピッたのっ」

「んで その…」

「フェスよっ フェスッ!」

「ふぇっ!? ふっ…えっ?」

「…フェスティバル 祭典、お祭り 略語でフェスって呼ぶ人がいる」

「お祭りかぁ~ あっ そうだっ…」


ファサッ
「…第○○回 夏祭り…?」

「そう言えば もうすぐ夏祭りがあるんだった すっかり忘れてたよ」

「コレよ コレコレッ!」



「シンジッ!」

「何だよぉ…」

「あたしをコレに連れて行きなさい」

「なんで僕が…しかも上から…」

「連れてけ やくめでしょ!」

「(んだよ 自分で行けばいいじゃん…)」
「やくめって?」

「フフ…決まってるでしょ それは」

「うう…(いやな予感しかない)」



ピーヒャラピーヒャラ

「ウヒョォー シンジのお金で食べる フェス飯はサイコゥー」

「やっぱりっ…」


「アラいいじゃない あたしと一緒にフェス回れるんだからさぁ」

「さっきからフェスフェスとか フェス飯とか 間違ってないけどさ…なんか」

「帰国子女が こうしてジャパニーズ・キモノ着て 振る舞う姿 ギャップ萌えでイイでしょ?」

「振る舞ったのは ぼ…」

「気にしない気にしない」
「♪イイでしょコレコレェ~」

「(物静かだったら 全然可愛いけど…五月蝿くてかなわないよ…)」

「オトコなら言う事あんでしょ?」

「えっ」

「ニッポンの男子はレディーの扱い方も分からないなんて ホントバカ」
「バカ過ぎて バカになったわね…」

「んだよ その言い方」

「だったらあんた ここで気の利いたセリフ一つ出しなさいよ」

「うっ…」

「ホレ 言ってみ?」

「そっ そっ そのユカッ… ユカァ…」

「ウンウンッ…」

「その浴衣ぁ…」

「ウンッ!?」


「…碇君 お待たせ」

「!?」
「あはなみっ そのユカタッン とっても君にぴったりだからぁ!」ギグシャク

「…碇君っ…」

「こいつっ…ダサ過ぎっ…」




テンツクテンツク…

「…」

「あ 綾波っ…」

「…」

「(やばい 間がもたないっ)」
「(なんか話さないと つまらないって思われるかも)」
「(って…何を話せば…)」
「(そうだっ)」

「あっ…お祭りは屋台の食べ物が醍醐味だよねぇ~」

「…」

「(あれっ?)」


「なんか お祭りで食べる焼きそばって 妙に美味そうなんだよなぁ~」

「…」

「(やばっ 焼きそばって肉入ってたっ…綾波には禁句っ)」
「(どうしよう ずっと喋らないよ…)」


「…(綿飴 美味しそう…)」





「たっ 大変よぉ~ッ!」

「アスカッ…?」

「大 たい タイ 大変っ」

「なんだよ 血相変えてさぁ 何事?」

「兎に角来てっ」




「ここよっ」

「ここっ?」

「これのどこが 大変なのさ?」

「見なさい この屋台 小魚をあんな狭いとこに閉じ込めて見せ物にしてんだわっ」

「はぁ?」

「悪魔的よ 悪魔的な屋台ね 例の団体に訴えられるわねっ」

「アスカ…」

「へ?」





「ギョギョッ!?キンギョすくいですてぇ?」

「…金魚すくいは浮世絵の版画に出る位 かなり歴史がある物」

「へぇ 綾波 それ知らなかったよ」

「あ あたしは知ってたわ 当然よ」

「へぇ…」

「ナニよっ こいつが全く喋らないから 言葉を引き出してやっただけ」

「…」

「なんたってあたしはあんた達と違ってエリートなんだから」



「で」

「へ?」

「どうやんの?」

「えっ」

「お手本見せてっ やくめでしょ」

「分かったよっ (結局分からないんじゃないか)」
「おじさん 僕やるよ」

「あいよ ポイ○○円ね」


「こいつを使って あの泳いでる金魚をすくうんだ」

「フーン…」

「見てろよ…」


「えいっ」
シュルッ
「あれっ」

「もう一度」
「えいっ」 シュル

「あっ」


「破れちゃった」

「…碇君」

「(うっ…)」

「おじさん…もう一回」

「あいよ…」


「おりゃ」
「あれっ…」

「それっ」
「あっ」

「うまくいかないなぁ」

「シンジ…」

「(うっ…)」


「おじさんっ もう一度」

「ほら さっきのより強いのを使いな」

「えっ…」

「ツレに良いとこみせたいんだろ?あんちゃん」

「そんな事…って言うか最初から…」

「ホラホラ やったやった」


「えいっ」
「それ!」
「どうだっ」

チャポッ!
「やったぞっ」

「やっとぉ~?待ちくたびれたわよ」
「って これ黒くて ブッサッ」
「もっとキレイなの取れなかったの?」

「…これは出目金」

「デメキンッ…? ヒカキンじゃなくて?」

「…ちょっと碇君に似てるかも」

「そ そうかなぁ~」

「あ~スケベで目が血走ってる時のシンジに似てるかもね」  

「ううっ なんだよぉ~」


「次はあたしの番ねっ」

「…」

「キンギョすくいでも エリートのあたしは全力よ」
「なんてったって 愚民を キンギョを救うのはエリートの役目ですもの」

「…」


「アフカァ~ がんばぇ」ズゾゾッ

「…(綿飴 美味しい 確信)」


「オジサマ それ一つ貰えるかしら

「あいよ ポイ○○円ね」

「フフ かったわ」

「アスカ?」

「このポイだけで 全部のキンギョを救ってみせる」
「光輝くワザ魅せてあげる」
「あたしはヒカキンになるっ」

「おりゃ!」ジャブッ

「どりゃっ」ザブッ
 

「オジサマッ お代わりを」

「あいよ」

「どりゃっどりゃっ」

「オジサン!次ッ!」

「あいよ」

「それそれっ」ブンブン

「オジサン! 次早く!」

「そらよ」  


「オラオラオラオラ」ジャブッジャブッ


「ナニよっこれっ 紙装甲ってレベルじゃないわよ」
「こうなったら…」



「フルアーマーポイ 5枚重ねなんだから」

「毎度~」  

「…非課金とは…」



「オリャオリャオリャオリャ」

「ドォォリャァァァ!」
ジャポンッ!



「ハァ~そもそも紙で救うってのに無理があると思うの あたし…」ポイッ…

「…」


「結局ニッポンのフェスってこんなもんなのね…」


「…」


「…すみません 私も」

「あいよ ポイ○○円ね」

「…はい」

スッ


「…(気持ちを落ち着かせて)」

「…(游ぐ動きをよく見て)」

「…(この仔)」

シュッ

「綾波っ」

「ウソッ…でもミラクルは一度しか起こらないわ」


「…(焦らず けど水面につける時は一気に)」

シュッ

「またしても」

「ウソッ…ま まぐれよね」


シュッ シュッ
シュッ シュッ



「凄いよ 綾波っ」  



 

「お嬢ちゃんっ!」   

「…はい」








「ナニよっ あのオジサンの態度」
「『ウチはプロはお断りなんだ』って ただキンギョが全部すくわれるのが いやなだけよね」

「…」  

「気にしないで エコヒイキ あんたのあのワザ ピカビカに光ってたわよ」

「…ピカッ?」


「結局残ったのって この出目金だけか」

「イイじゃない 似た者同士 あんたちゃんと世話なさいよ」

「これ以上負担が増えるのは…ちょっと」

「よぉし せっかくフェスに来たんだから まだまだグルメを楽しまないとね」

「うっ…」
 
「勿論あんたのお金でね」

「もうやだ~」  

「コラァ 待てぇ」