章雄は何やら、向こうの親子連れのお客と話をしていて、お知り合いのようだった。そうかと思ったらその娘さんが調理場に入って来て章雄と何か話をしている様子だった。

其から数分がたっただろうか、
小柄な黒色のコートをきた二十歳前の娘さんが、歩夢の前まで近づいてきてカウンターを挟んで歩夢を見て、恥ずかしそうににっこり微笑んだ。
歩夢は一瞬どう返したらいいのか戸惑ったが
軽く会釈をした。
そして娘さんに「どうしたの。僕の顔に何か付いてる?」と言った。
娘さんは、「いいえ、何にも。」と言ってまた微笑んだ。

章雄が娘さんの横にとことこと寄ってきて
「一花、酒ついでやれ。」と言うので
一花は歩夢にお酌をした。
「ありがとう。」と歩夢は言った。
どうしてかな。と不思議に思えたが歩夢は
少し嬉しかった。一花はまた私を見て微笑んだ。一花は自分から話そうとしなかった。

歩夢は「住まいはこの店の近くですか。」
と何気なく聞いてみた。
一花が「石川県の小松からよ。」
と答えた。
「遠いところからですね。電車で来たの。」
「そうよ。」
と、一花が答えた。

まだ二十歳そこそこの小柄で可愛らしい娘さんだった。髪はストレートで少し長めで美しかった。