『老舗狙いのお中元難民』


 私が勤めている会社でホワイトコーンはいつ売るのかお客さんから問い合わせがあった。

 私は、もうお中元の季節だなと思った。

 そう、お中元。

 私は、祖父に、お中元としてホワイトコーン10本を送ったことがあるのだ。

 そして、姉夫婦に桃を6個送ったことがあるのだ。

 ホワイトコーンは、評価が高かった。しかし、桃は清水白桃なのに、「硬い桃がよかった」と、言われて、概ね評価は、悪かった。そういうものの、甥っ子が、清水白桃を食べたらしい。私は、送ってよかったと少し安堵した。

 姉夫婦には、10月にシャインマスカットを送ったこともある。

 これは、大好評だった。しかし、お中元の時期には、当たり前だが、シャインマスカットは出ない。

 困った。

 私は、お歳暮におじいさんと母に千疋屋のジャムを送ったことを思い出した。これは、好評だった。

 だったら、千疋屋のジャムにしよう。

 とはいえ、岡山に千疋屋はない。大阪の近鉄百貨店まで行く必要がある。

 困った。

 オンラインショップもいいのだが、私はほとんど家にいない。いても、夜遅い。

 私は、岡山高島屋に行き、お中元のカタログを貰った。

 「おっ!」

 なかなか、いい商品が揃っている。特に、とらやの「雲の峯」という羊羹は視覚的に夏らしい爽やかな感じがする。

 そこで、また、出鼻を挫かれる。岡山にとらやはない。また、オンラインショップらしい。近くは、橋を渡って高松までいかないとならない。

 ちきしょう。

 なんで、岡山には、ないのだろう?

 岡山の菓子もいいけど、姉夫婦には、わかりやすい記号的なお中元がいいのだ。

 そうなのだ。

 私が、姉夫婦から貰うものは、流行りものだ。

 つまり、流行りものということは、一時的とはいえ、有名なものなのだ。

 私は、流行りものなぞ知らない存ぜぬなので、老舗で済ませたいのだ。

 カタログをパラパラ見る。

 帝国ホテルのジャムがあった。これも、よさそうだ。

 もう、私の家に送って貰おう。そして、手渡ししよう。

 そのとき、両口屋是清の文字が光った。

 この店、岡山にあるぞ?

 私は、知らないお菓子屋をネットで検索した。

 両口屋是清は、名古屋の老舗らしい。

 よし、とらやの「雲の峯」、千疋屋のジャム、帝国ホテルのジャムがなかったら、これにしよう。

 ちょうど、夏限定の羊羹があるらしい。値段も、こちらの方が安い。

 でも、味に自信がないな。

 困った。

 でも、老舗なら、まずくはないだろう。

 私は、そう思い直し、6月の給料日のあと、お中元を買うことに決めた。

 これで、大阪まで行かずに済んだ。よかった。よかった。