Ⓒ佐野直哉 出典:ANNnewsCH

 

2026/04/28  社会ニュース ANN/テレ朝
深い群青色の背景に、鮮やかな黄色のひまわりが映える。1888年、ゴッホが描いたひまわりです。

この作品は、デジタル技術と人間の感性を織り交ぜて復元する「クローン文化財」でよみがえりました。クローン文化財は、オリジナルとは別に高度な技術で復元していて、作品に触れながら鑑賞できます。

プロジェクトを率いた、東京藝術大学・名誉教授の宮廻正明さんは、この絵についてこう語ります。

「やっぱり手で触るのが一番なんですけど、なかなかこの絵をこういうふうに触ってみるっていうのは普段はありえないことで、そのゴッホ美術館の館長さんも、このゴッホの絵を持っていたときにこうして、人生で初めてゴッホの絵に触ることができたということで、すごい感動されています。絵画的にも、造形的にも、よく色の遠近を理解して描いている絵じゃないかなと思います」

もともとは1920年、関西の実業家・山本顧弥太が購入。“芦屋のひまわり”として知られていました。

しかし、神戸大空襲で作品は焼失しました。

宮廻さん
「なんとかこういうものが復元できないのか」

残る資料はモノクロ写真が多く、カラーの資料もごくわずか。しかも目指したのは単なる復元ではなく、ゴッホが描いた直後の鮮やかなひまわりでした。

宮廻さん
「できないと思ったらできないので、それでまず頭の概念を柔らかくする。で、できるんじゃないかと」

どうやって復元したのでしょうか。

まず、画集をもとに手作業で模写を作り、画像をデータ化。ゴッホの他の作品を参考に、画像の色を補正します。画像をキャンバスに印刷し、白い油絵の具で凹凸を再現。その上から画像を印刷し、最後は手作業で仕上げます。時間経過で発生した変色も補正するといいます。

宮廻さん
「(絵の表面に)ニスをかけてしまっちゃうので、だんだんちょっと色が変わってくるんですよね。で、その(変色した)分だけを引いて、色をのせるって作業が、絵描きじゃないとできない部分なんです」

こうして、ゴッホが描いた直後の状態の《ひまわり》がよみがえりました。

そもそも、クローン文化財とは何でしょうか。

これまでにも人の手で作られた複製はありました。一方、クローン文化財は単なる複製ではなく、デジタル技術を使って精密に復元します。ただし、作品を精密に復元しても、英語では「コピー(複製)」と訳されました。

宮廻さん
「何かいい名前はないのかなと思っていて、それで上野公園を歩いていたら、皆さん花見をされていて、そこにソメイヨシノというのがあって、あれが全部クローンの桜なんですよね。それで考えついたのが、この『クローン文化財』という名前の始まりなんです」

失われた文化財を復元するスーパークローン文化財も生まれ、アフガニスタン・バーミヤン遺跡の壁画も復元しました。

宮廻さん
「タリバンによって、大仏の上にあった壁画が全部爆破されてなくなってしまったんですよね。真ん中に太陽神、神様がいて、こっちに天女がいて、風神、雷神がいて、両側に仏教とか一つの壁画の中にみんなで収まっているわけですよね。屋根の下でみんなが平和に暮らしているということが残したかったんですよね」

ミャンマーの世界遺産、バガン遺跡の壁画も復元しました。

宮廻さん
「暗いところでデータを取ってきているんですけれども、それをどこまで本物と同じように再現するかということを、絵描きとして調整をしていく」

宮廻さんにはクローン文化財で目指していた夢がありました。

宮廻さん
「本当はこのクローン文化財で日本の国宝美術館が作りたいと思ったんです」

日本では国宝を保護するため、移動や公開期間が厳しく制限されています。国宝のクローン文化財を展示すれば、オリジナルを保護しながら多くの人に見てもらえると考えています。

宮廻さん
「文化という資源はいくらでも日本人は作れる。世界に通用する資源なんですよね。みんながそれで共有して楽しんでもらえるというのは、日本の中にはたくさんまだ眠っているんじゃないかなと思います」
[テレ朝NEWS]