近頃読んだものをまとめてザックリ
・HER/ヤマシタトモコ ★★★
友達に薦められて読んだ。興味深い、という意味では面白かった。
色んな女の生き様の短編集という形式。
「私より醜くて性格の悪い女なんていくらでもいるのに何で私じゃないんだろう」って考える醜さとか、
毎日仕事に追われてずっとこのままだったらどうしようって考えたときの足がすくむ怖さだったり、
女子高生の「普通」の枠から外れないように生活することのくだらなさ、16歳の人間がみな経験する人類にあまねくふりかかる呪い、
生まれたときから裕福で素で優しかったり自然体な女が大嫌いって思う気持ちとか、
「私何にも考えないで「女の人って怖いよなー」とか言う男ってほとんど殺したい気持なの」とか、あーーあるあるわかるっていう話が詰まっていた。
でも最後の話の「だって女だもん」っていう返しかたは、分かるけどちょっと鼻につくっていうか、開き直るなよとも思うっていうかもっと別のタイプの女に言わせてほしいセリフだった。
あとがきの「転んで泥だらけになっても立ち上がる女の子が大好き」って作者が言っていたのがまさにこの本の内容を表していると思う。
・バクマン。16巻 ★★★
かなり勢いというか、面白さを取り戻した!
「最高に盛り上がって人気があるところで作品を終わらせたい」っていうのは確かに、人気がなくなってきたから収束させるよりもあるべき形なのかもしれないと思った。
そう言い出して「10週(だっけ?)連続で1位を取ったら終わらせる」のを防ぐ為に編集者や他の漫画家が本気を出すっていう展開はなかなか面白かった。おのおのが努力して立ち向かうっていう形はやっぱり燃える。まあ、編集長そんなの許すなよって思ったけど…
他のところは相変わらず突っ込みどころがかなりあるというか、秋名?の編集者はどうしてこんなに作品に対してやる気が無いの??最低じゃない??だったり、新展開の「昔1発当てた作家にブレーンがついて再ヒットを飛ばす」話、多分ブレーンは前にネットで人数集めてアイディアを固めるっていうのをやった人だけど、あまり現実味が無いというか…そんな何人も連載できるようなアイディアとか生み出せるかね…みたいな。
あまり奇をてらった展開とか、新キャラとかはいいから、今ある土盤の中での連載を続けるときの苦悩だとか、努力だとかそういう現実に紐づいた話にしてほしい。
・イン・ザ・プール/奥田 英朗 ★★
さまざまな現代病を抱える患者を、一見頭がおかしい精神科医が独特な形で治療してゆく、という短編集。
最初は治療だとも思えない精神科医の奇妙な言動や行動が、後に意外な形で繋がって理由が見えてきたり、たまたま治療に繋がっていたりして結局治癒に向かってゆくのだけど、
医者があまりにも気持が悪いのと、文章力があまり無いのか、展開が都合が良すぎるからか(そんなうまく治るかよみたいな)あまり面白くなかった。
・コインロッカーベイビーズ(下巻)/村上龍 ★★
上巻が面白かったから期待してたけど、あまりの鬱展開でちょっと…
結局、自分の求めるものや心を穏かにする方法が分からなくて精神をおかしくさせたハシをキクも誰も救えなかったのが残念、というか途中からキクの中でハシの存在ほぼ無くなったよね?あんまりだわ…
相変わらず人の混乱した精神や世界観の描き方は秀逸です。
・モダンタイムス/伊坂幸太郎 ★★★
「魔王」の続編とあって、魔王がめちゃくちゃ面白かったし「ここで終わりって!?!?」って感じだったからすっごく楽しみにしてたわりにはイマイチだった。
SEプログラマーかなんかの主人公が、顔の見えない会社からあるプログラムの構築を依頼される。
その中身を手繰っていくと、あるキーワードで検索をする行動が鍵となることが分かる。そのキーワードとは、過去起こった中学校の立てこもり虐殺事件の中学校の名前や、ある種の超能力があり過去の首相にも通じた人物であることが分かり、真相に触れてゆく…という話。
浮気を疑われて、本性不明の妻に拷問屋を雇われ拷問されかける場面だったり、キーワードを紐解いてゆく上巻は面白かった。
正体不明だけど多分殺し屋なんじゃねーかっていう空気をかもし出す飄々としながら嫉妬が凄い奥さんの、「わ
たしの夫に手を出しといて無事でいられるとおもうひとー。しーん」とか、
「魔王」の主要人物安藤(じゃんけんとか競馬とか、ある一定の数の中の勝率が見える)とか、その兄(他人に腹話術を使うことができる。その時代の首相候補に言葉を言わせようとして殺される)がどうやって絡んでくるのかとワクワクしてたのに、まあ舞台が100年後?とかだからっていうのもあるけど、「これ続編って銘打つ必要があったのかな??」っていうくらい絡み方が薄くて微妙。
「魔王」ではラスボスっぽかった犬養首相も引退していて出てこないし、結局「国家とは生き物であり、首謀者はいない。強いて言うならみな国家という生き物をいきながらせるためのひとつのパーツである」みたいな分かるんだかわかんねーよ!!な理論で終了するし、
安藤の遠い血縁である主人公が、実は何かの能力を持っているのではないか、それを妻は知っていて目覚めさせる為にいろいろひどいことを仕掛けてくるのではないか、というところはワクワクしたけど結局腹話術ができるっていう「この流れで超能力者にする必要あんま無いよね??」って感じだし、「あなたは特別な能力を持っているわ。妻を幸せにする能力、とか」ってそーいうのいいから!!っていうオチだったり、まーなんかいまいちだった。私はてっきり何だかんだ適応力が高くてうたれ強くて物事をそこまで深く考えてないから(もう不倫相手のこと忘れたの?とか)そのあたりの能力かと思ってました…
よかったところは、チャップリンの言葉の引用が出てくるのだけど、「私は皇帝にはなりたくない。支配するよりも人々を助けたい」はいいなあと思う。あと「大きなことじゃなくて、目の前の小さなことが大事なんだ」っていうのも良かった。
・おまえさん/宮部みゆき ★★★
「ぼんくら」「日暮らし」のシリーズもの。
とはいっても前2作の内容は完全に忘れた。
やる気が無くて馬面の町奉行所同心井筒平四郎と、その甥の超美形超頭脳明晰弓之助とその周りの人々の、江戸で起こる事件を解決してゆくお江戸版コナン君話。
今回は辻斬りにあったように見える3人の死体が、生薬の大店で20年前に起こった新薬の開発にまつわる忌まわしい殺人に繋がってゆく事件。
遺族の美しい娘と義母から、関わってゆく人間模様から見える、女の性や惑わされる男の愚かしさ、そういったものを扱った話だった。
宮部みゆきの江戸もの(特に短編集)は大好きなのだけど、今回はまあ…そこまででもなかった。弓之助の推理にそこまで根拠が無くて、それって結構な憶測だよね…?(でも当たってる)って感じであまり腑に落ちないし、最後なんらかの形でどんでん返るような驚き展開あるのかなーと思ったら特に無く普通に終結するし…
今回殺された生薬屋の旦那が、後妻として引き取った美しい妻の亡くなった元夫をも殺して夫の座を奪ったのではないか、と娘と主犯の男が疑ったところが起点なのだけど、それも推測の中で「きっとこう思ったんじゃないか」で済んでしまったので、それが誤解だと知ったときもっと葛藤とか後悔とかを見せてほしかった。
ただ、人のよい長屋の住人の丸助?妻を亡くして寂しい暮らしをしていて、でも健気に生きていて日々起こったことを全て位牌を通して妻に報告しているひとなのだけど、弓之助の兄淳三郎やあらゆる人間と関わることで、夢枕に立っていた妻が「もう寂しくないね」と告げて逝ってしまうところは泣けた。寂しい、とか死んだ人を想う、っていう気持を切なく、でもどこか暖かく描く宮部みゆきはやっぱりいい。