女は過去が嫌いだった



どうしてまわりの男たちは皆



私の過去を詮索するんだろう



私は過去よりも今を精一杯生きたいの



コツコツと足元で鳴り響く6㎝のハイヒール



帰り道をいつも急いで帰る


どうして私はいつもこんなに急いでいるんだろう



たった一秒前の時間も



この女にとって過去だった


私はこんなに急いで何処に行くんだろう



未来を考えることすら疎ましくなっていた



だって私は今を生きたいの



今をこの時を精一杯生きたいの



だから過去も未来も見る余地など全くなかった



考える暇なんて私にはいっさいない



女はバックから手鏡を取り出し口元にかざした



そしてグロスを塗りなおす



輝きを増した口元を見て



この女は満足気な笑顔を取り戻す




私には過去も未来も関係ない



この時を精一杯



生きたいように生きていく


それがこの女の生き方だった



女はまたコツコツと6㎝のハイヒールを



鳴り響かせながら



忙しく去って行った