私が住む地区の真ん中を貫いて流れる川の端に、子供達が遊ぶ広場があります。
私もここで小さい頃から遊んできました。
夏休みでみんながここで遊び夕方、親たちに夕餉を告げられて帰っていきます。
一人二人減り最後に、かわいいべべ(着物)を着せられた3~4歳の女の子だけが残ってしまいました。
近くの女性が 「かわいい着物を着せてもらって。この辺で見かけない子やね、お名前は? 早くお家へかえらないと家の人が心配しているよ」
女の子は「きぬゑです、この近くに住んでいたんだけど、お父さんもお母さんも、お家もなくなっているの」と、しくしく泣いていました。
夕闇が迫り女性が心配しながら見ていたところ、小さな蛍が近くの家のほうへ消えて行きました。
広場には、もう女の子はいませんでした。
明治時代に祖父の妹が家のすぐ前の川で命を落としました。
当時、町一番の財力を誇った我家に悲劇が襲い掛かり、両親や兄弟は涙に暮れたと言うことです。
後に逼塞し、やむなく家を引き払い、近くへ引っ越しました。
その後、この川で母や姉も災難にあいましたが、発見が早く九死に一生を得ました。
明治38年10月18日
英雲童女 俗名きぬゑ 3歳 と過去帳にありました。
今日からお盆です。迎え火を灯してご先祖様をお迎えします。
3歳の女の子が、この広場でみんなと一緒にもっと遊びたかっただろうことを思いながら、下手なお話を作ってみました。
子供達の遊びもかわってしまい、もう広場には子供の姿はありません。

