トンネル その2 | フライドチキンと海のおと。

トンネル その2

バスはトンネルに入った。
I君は前方を見たが、出口の光がすごく小さい。
かなり長いトンネルのようだった。
見た感じ、何百メートル。
いや、1キロ近くあったのかもしれない。



車の外は、トンネル特有のオレンジの光。
暗いので、
車内の蛍光灯のあかりで自分の姿が窓ガラスにはっきり映る。




ふと、I君は外を見た。
ガラスの中の自分も、もちろんこっちを見た。


その顔が、目を閉じていた。


最初、I君は違和感に気付かなかった。
しかし、待てよ。
今、自分は、目を閉じた自分を見ている。
目を開いて。



現実を認識した瞬間、I君は悲鳴を上げていた。



「うわあっ! 何やこれ!?」



I君の大声で、車内の全員が飛び起きた。
そして、全員がI君の方を向いた。
もちろん窓ガラスに写っている顔も一斉に振り向いた。


I君は見た。


ガラスに映った顔は、すべて目が閉じられていた。
一人残らず。



バスはトンネルを抜けた。
外のぼんやりした光が車内に入り込んだ。
窓ガラスに映った顔は何事もなく、
メンバーのあどけない、少し驚いたものに戻っていた。





「絶対、ほんとの話なんです」
I君は何度も念押しした。