トンネル その1
「絶対ほんとの話です。見間違いなんかじゃない」
I君はそう前置きし、話してくれた。
I君は中学の頃、サッカー部だった。
そしてI君の学校はサッカー部が強いということで、
大阪ではけっこう有名だったらしい。
他校との練習試合のためにどこかに遠征する、
ということも頻繁にあった。
その日も練習試合だった。
相手校はマイクロバスで山を二つ越えたところにある。
試合には勝ったものの、
かなりの激戦だったゆえ、
運動量の多さにメンバーは疲れきっていた。
顧問の教師もチームメイトも、
帰りの車内では眠りこけていた。
I君もうとうとしかけたが、
バスの大きな揺れをきっかけに目が覚めてしまっていた。
時間は六時過ぎ。
暗くなりかけている。
外は山道だ。
ぼんやりと霞がかっていた。
車内は静まりかえっている。
運転手とI君以外、起きている者はいない。
<つづく>