イエスタデイ その1
この話を書くことには躊躇があった。
でももやもやしているのならいっそ書いてしまおうと思えたのは、
何よりいつも読んでいただき、
かつあたたかいコメントを頂ける皆様のおかげだ。
読者の皆さん。本当にありがとう。
皆さんのことを心から愛しているし、甘えています。
皆さんがいなければ、
僕はもう一行たりとも書き進めることなどできない。
手元に一通のエアメールがある。
封筒の裏面にはこんな一文がある。
『もし読めたら日本語訳をつけて送り返してきなさい!』。
エアメールをもらったことなどこれが最初で最後。
たったの一通きりだ。
古い手紙を片付けていたら出てきた。
覚えてるかい? といった感じで。
イギリスから送られてきたものだ。
消印の日付は二十年前。
送り主は、その時付き合っていた彼女だ。
ちょうど二十年前。
はじめてできた恋人に、
「なんか物足りないんだよね」
という情け容赦ない言葉をぶっつけられ、木っ端微塵にふられた。
僕はへろへろになり、
半泣きになりながら阪急梅田駅のコンコースにあるカード電話にたどり着くと、
恋人(元ね)の親友、マイの電話番号をプッシュした。
1コール目でマイが出た。
「あ、マイ? 俺」
『あ……ひょっとして、ふられた?』
「……なんでわかった?」
『そりゃわかるよ』
「だからなんで」
『…………』
みたいなやりとりがあり、
マイは『すぐそっち行くね』と言って電話を切った。
マイの家は梅田駅のすぐ近くにあった。
僕と彼女(しつこいが元、ね)が付き合いだしてすぐ、
「親友だから紹介しとく」
と言われ、彼女はマイを連れてきた。
はじめてマイを見た時の印象は
「外国人みたいだ」
だった。
肌が真っ白で、瞳と髪が栗色だった。
彫が深く、不自然なほど顔が小さかった。
あとで知ったことだが、マイのおじいさんはイギリス人だった。
なるほどそれで、と納得できるルックスだ。
マイは大のロック好きだったので、
僕ともすぐ意気投合した。
話し方も考え方もさっぱりしていたので、
彼女と三人で遊んでいても、
ついつい話しやすいマイと盛り上がっていることもよくあった。
その時僕は彼女にメロメロで、
好き過ぎてカッコつけて変に気を使ってしまい、
恋人でありながら彼女とはうまく話せなかったのだ。
だからマイの存在は緩衝材的で、
いてくれるとありがたかった。
雰囲気がやわらぐのだ。
<つづく>