猫ミニュケーション | フライドチキンと海のおと。

猫ミニュケーション

友達のAちゃんと半年振りにご飯を食べた。
Aちゃんは大の猫好きである。
自身も猫を飼っているし、猫トモもたくさんいる。
その猫トモの一人がEさんという人で、
この人は今「モコちゃん」という三毛猫を飼っているという。


その猫は五歳。
写メを見たが、ほんとに不思議なくらいモコモコしている。
Eさんが寝ていると、枕を前足でくっ、くっ、と踏む。
「布団に入れておくれ」の合図なのだ。
そしてEさんが布団に入れてあげると、
モコちゃんはちゃんと枕に頭を乗せ、

必ずEさんに背中を向けて寝るらしい。


「つれないなあ、モコちゃん。わたしのほう向いてよぉ」


と言いつつEさんが無理やりモコちゃんの体をこっちに向けても、


「ちっ。やれやれ」


という感じでモコちゃんはすぐに向こうむきになる。
Eさんはその仕草にメロメロなんだとか。
ま、僕にはあんまりわからない。





実はモコちゃんは、目がほとんど見えていない。
モコちゃんは、Eさんの昔の同僚のSという人から引き取られた。
このSさんには情緒不安定なところがあって、
モコちゃんのお母さんがモコちゃんを産んだ時、
つまり産まれて間もない時に、モコちゃんの頭を強く叩いたらしい。
そしてあつかましくもこのSさんはEさんに、


「なんかイライラしてる時はついペットにあたっちゃうんだよね」


と言った。
Eさんはこれはいけない、と思い、
ブチの模様のバランスが悪くて
貰い手の無かったモコちゃんを引き取った。
そのためにEさんは「ペット可」のマンションに引っ越した。
Sさんは子猫を手放したあと会社を辞め、
そのまま行方がわからなくなったらしい。




頭を叩かれた時のショックで、
モコちゃんは失明してしまった。
今でも頭の近くを触ると、
モコちゃんの体は小さく震える。
雨が強く降っている夜はことさらに怯え、
「布団に入れておくれ」
の合図をする。
色々なことが怖くてたまらないのだろう。



でもEさんのはかり知れない深い愛情によって、
子猫の頃やせっぽちだったモコちゃんは今、
ちょっと太りぎみといえるくらい大きくなった。
Eさんは目下ダイエットに励ませている? らしい。
しかし「痩せさせなくては!」と思っているものの、
おいしそうに煮干しを食べているモコちゃんを見るとEさんはついにやにやして、


「モコちゃんありがとう。わたし、しあわせよ」


と言ってしまうそうだ。