水の陰に棲むもの その1
子供の頃の話なので、記憶も少しあいまいだ。
家の近所に古い、大きな団地があった。
その団地の裏にはちょっとした広場があった。
幼い僕達の格好の遊び場ではあったのだが、
三方をぐるりと防風林におおわれたそこは日当たりが悪く、
一日中じめじめしていた。
水捌けも最悪だったので、雨なんか降ろうもんなら、
何日も湿地帯のような状況から復旧しなかった。
幼稚園児だった僕は、
幼馴染のM君とよくそこで遊んだ。
その日も何か水棲の、
珍しい昆虫か何かを捕まえようと思っていたのだろう。
僕とM君は補虫網を手に持ち、
裸足になってそろそろと水に入っていった。
ふくらはぎくらいの水位だ。
泥水なので透明度はゼロ。
僕は息をつめ、
網を水に浸してゆっくり左右に振っていた。
M君が僕から十メートルくらい離れ、
僕におしりを向けて土をさらうのに夢中になっていた時だ。
それを見た。
僕のすぐ足元で。
確かに三十年以上前の話ではあるのだけれど。
でも、僕は見たのだ。
<つづく>