冷たく暗いトンネルの先には | フライドチキンと海のおと。

冷たく暗いトンネルの先には

「トンネルってよ、いやあな時みたいだなァ。一人っきりで寒くてよ……。
 でもな、いつかは抜けるんだぜ」
              /『うしおととら』より 法力僧・蒼月紫暮のセリフ



よく、

「プラス思考になんなきゃだめだよ」

と言う人がいる。

いやいや。
誰だってなりたいんだって。
でもそれができないからしんどいんだって。

僕はレッキとしたマイナス思考人間なのでハッキリ言えるが、
マイナス思考の人間に「プラス思考になれ」というのは、
海で溺れている人間に

「苦しかったらエラで呼吸すりゃいいじゃん」

というようなもんだ。
できりゃやってるって。


とはいえ現代社会に生きていると、
とかくプラス思考を求められる。
「笑っていないと、いいことは起こらない」とか。
これがしんどい。
辛いから笑えないのだ。


「いつでも笑っている人間」と「辛い時こそ笑える人間」というのは違う。
根本的に人間の種類が違う。
僕は決して前者ではない。
かといって後者にもなりきれていない。
でも僕は後者でありたい、と思う。
辛い時に笑う努力をしなければ、いくらでも「辛さの淵」に落ち込んでゆく。
一旦落ちてしまうと這い上がるのはとても難しい。
そしてそこには死の影さえちらついている。
そうなったらいいことなど何もない。


確かに辛い時の笑いなんて、
ただ唇をゆがめただけのつくり笑顔なのかもしれない。
でもとりあえずはそれでいい。
唇をゆがめて笑顔を作り、


「ま、しゃーないかぁ」


とため息をつけばいい。
そしてそのあと、僕はこのセリフを思い出す。


「トンネルってよ、いやあな時みたいだなァ。一人っきりで寒くてよ……。
 でもな、いつかは抜けるんだぜ」


そのトンネルの性質は、人によってもタイミングによっても異なる。
長さも。深さも。暗さも。冷たさも。寂しさも。


ただ、変わらないことがひとつある。


それはトンネルなのだ。
いつかは抜けるのだ。


どんなにいやな時も、いつかは終わる。
そのトンネルは必ず明るい未来へとつながる。そう信じたい。
そう信じるところから、プラス思考ははじまる気がする。


プラス思考になるのではない。
プラス思考になるためのほんの小さなきっかけとなる、
引き金のような考え方なのだと思う。


えらそうなことを言うつもりは毛頭ない。
僕自身、自分を信じることも愛することもなかなかできない。
だからこそ、こういう「壁を突き破る言葉」にすがっているのだ。

「壁を突き破る言葉」はいつも強く厳しく、あたたかい。

そのぬくもりと輝きに、

僕は光を慕う蛾のように引き寄せられてしまうのだ。