不便で悲しい「狼男」のホンネ暴露本
『人狼の独白-Monologue of werewolf-』
/ピーター・A・ダウニー著
僕の住む遠雷町にはなぜか古本屋が多い。
家の周り、徒歩五分圏内で五店舗もある。
そのなかでも僕は「照屋古書店」をひいきにしている。
ひいきの理由は、僕の幼馴染が経営しているというのがひとつ。
そしてなにより、置いてある本のラインナップが面白い。
タイトルだけでぐっと惹きつけられるものが多いのだ。
一般の書店では見たこともないような古書ばかりなので、
若干値段は張るのだが我慢できずに買ってしまう。
そして部屋が本でどんどん埋まってゆく。自分でも困っている。
とはいえ本を読むのはやめられない。
一生かかって読める本の量なんてたかが知れているだろうが、
それでも本を読むのはやめられないのだ。
そんなわけで、
『人狼の独白-Monologue of werewolf-』
という本を買った。
ルポライターでもある著者のダウニーという男が、
なんと本物の狼男にコンタクトを取ったのである。
どうやって見つけたのかもわからないし、
もちろんその狼男が本物なのかなんてわからない。
しかし騙されていることを理解しつつ、
あまりに面白くてむさぼるように読んだ。
まずはAという狼男にダウニー氏が取材をするのだが、
その内容が面白い。
「月夜になると人が襲いたくなる」
みたいな話が出てくるのかと思ったらさにあらず。
「狼の時は四足なので、翌日手のひらを見ると古釘が刺さっており、
あぶなく破傷風になるところだった」
とか、
「朝起きるとベッドがノミの死骸だらけになっていて困る」
とか、
「自分より大きい本物の狼と縄張り争いをして半殺しにされた」
とか、
「とにかく自分が獣臭くてメシがノドをとおらない」
とか、
「いかんせん抜け毛が多い」
とか、つまりコメントがやたらどんくさく、
生活臭がぷんぷんするのだ。
ロマンなんてひとかけらもない。
ひたすらにホンネを暴露しているのだ。
狼男というのがいかに面倒で不便であるか、というホンネを。
Aの場合は先天的な狼男だという話だが(先祖から狼男の血を脈々と受け継いでいるらしい)、
噛まれて唾液からウイルスが伝染し、
狼男になってしまった、というのが次のQという男。
断っておくが、著者のダウニー氏はあくまで真面目にこの本に取り組んでいる。
本文中でもしきりにノンフィクションであることを強調している。
このQの話もとことん哀れで間抜けである。
中でもおかしかったのが、
「銀の弾丸じゃなくても痛いことは痛い」
というものだ。
退治されたくないので、やっぱり狼男にはなりたくない。