「ふーん、外国ね」
真一はできるだけ平静に応じた。せっかく掴んだチャンスが手のひらから転げ落ちる思いがして、やりきれない思いだった。
「ちょっと会社に居づらくなっちゃって..」
半沢の飲み会をバックれた話は聞いていたが、まさかそれが原因とは思っていなかった。
「前から留学もしたいと思ってたし、若いうちにチャレンジできることはしたいと思ってね」
屈託ない様子であるが、理由が理由だけに悔しさもあるだろうと真一は思った。
「これから、試験受けて、受かったら行くから、まだまだ先のことだけどね」
しばらくは、この生活が続けられる安堵感はありながらも、急に期限が設定されてしまったのだった。
りょうこは、家の掃除をしたいと言って、その日は家に帰ることになった。真一も、りょうこが帰ったあと、怒りが込み上げてきて、それを忘れるために一心不乱に家事に打ち込んだのであった。
(つづく)