「続・最後の約束」 


また、逢おうね。 

ふたり見つめあった。 

約束しようね。 

涙が流れてくるのを止められなかった。 

そう。ふたりとも、分かっていた。 

もう二度と逢えない事なんて。 

そんなこと。じゅうぶん分かっているけれど。 

約束せずにいられなかった。 













夏の病室。果たせない約束。蝉の声。 

涙を拭うこともしないで。 

ふたり。見つめあっていた。 

窓から入り込む、ゆるやかな風。 

君の髪が少し揺れた。 

「うそつき・・・」 

小さな声。 

僕は聞こえないふりをした。 





僕の身体は。 

少し壊れてしまっていた。 

いいや。もう、どうしようもないほどに。 

1秒毎に壊れだしている。 

今では君の差し出したジュースでさえ、 

持つこともままならなかった。 





「秋になれば、きっとうまくいくさ。」 

落ち葉をカサカサとさせながら、ふたりで歩こう。 

「そして冬になれば、君の誕生日だから。」 

・・・何も出来ないけれど、ふたり寄り添って歩いていこう。 

少し寒かったら、僕のポケットに手を入れて。 

僕はポケットにプレゼントを隠しておくよ。 

でも、歩き終わるまでは、気付かないでいてほしい。 

だって、ずっと立ち止まって見つめあってしまうだろう? 




「・・・家に帰れなくなっちゃうから。」 













・・・ 
僕の手は、もう微かに動くくらいで。 

ちいさな紙に書いてみるけど。 

「うまく書けないや。」 

ため息をついて、ポケットに閉まった。 

もうすぐ、手術が始まる時間だね。 

きっと最後の。 



君の差し出したジュースは。 

僕の手のひらから、滑り落ちた。 

あわてて、君は拾おうとするけれど。 

君はそのまま、泣き崩れて。 

「ねぇ、約束しよう。」 

僕は感覚のない小指を懸命にたてて。 













「また、逢おうね。」 






















・・・ 
夏の病室。果たせない約束。蝉の声。 

「うそつき。」 

きれいに畳まれた、あなたの上着。 

涙が流れてくるのを止められなかった。 

羽織った上着には、まだあなたの香りが残っているようで。 








約束した手をポケットに入れた。 

「暖かいね。」 







ちいさな紙きれ。 

「汚い字だね。」 








ちいさな声で読んだ。 













『ありがとう。また、逢おうね。』 



















窓から入り込むゆるやかな風、ちいさな声は。 

蝉の声でかき消された。 


















そう。ふたりとも、分かっていた。 

もう二度と逢えない事なんて。 

そんなこと。じゅうぶん分かっていたけれど。 

約束せずにはいられなかった。 

 白鳥 海 












「秋になれば、きっとうまくいくさ。」 

落ち葉をカサカサとさせながら、ふたりで歩こう。 

「そして冬になれば、君の誕生日だから。」 

・・・何も出来ないけれど、ふたり寄り添って、歩いていこう。 

少し寒かったら、僕のポケットに手を入れて。 

僕はポケットにプレゼントを隠しておくよ。 

でも、歩き終わるまでは、気付かないでいてほしい。 

だって、ずっと立ち止まって見つめあってしまうだろう? 








「・・・こんなに愛しているんだ。」