気づけば、5年。
この工場に来て、5年が経っていた。
僕は来る日も来る日も鉄柱を運んでいた。東のエリアから、西のエリアへ。
今日も僕は鉄柱を運んでいた。東のエリアから、西のエリアへ。
運んだ鉄柱の累計は分からない。幾度となく運んだ。山積みになっている鉄柱を、山積みされている鉄柱へと。我を忘れて。我を忘れて?
そう、今日は乾いた風が頬にピリリと刺激を与えるほどの湿度だった。そのせいだろうか、北から黄砂を乗せた風は日本領土の砂をも舞い上げ、まさに僕までも巻き込もうとしていた。本来なら、目を瞑ってそんな砂などやり過ごしてしまうのだが、今日は、日本と大陸とが混じる砂のグラデーションが、まるで目に見えているような錯覚を起こしたので、僕はそれに見入っていた。
しまった!と思い、鉄柱を持ったまま慌てたが、なんと砂は僕を通過していたのだ。
どういうことだ?気づけば、5年間運び続けたはずの鉄柱は1本残らず、消えていて、21世紀最大の不景気で潰れてしまった工場の跡地と僕だけがいた。
ここにあったのは意識だけだったのか。そう気づくには遅すぎたかもしれない。しかし、それでも僕は遣り残したことに気が付いた。あの瞬間からの記憶がないのである。あの瞬間から、僕は精神と肉体が分離し、精神だけが北九州に移動してきたのだ。
あの瞬間。
あの瞬間に隣にいたのは、間違いない。TETSU6だ。
僕は肩に載せていた最後の鉄柱を放り投げ(もちろん、それは地面にバウンドする前に消えてしまったのだが)、新幹線に乗り込み、東京を目指した。
―――SATO4が殺されてしまう―――
続く
-KEN5-