27時のシンデレラはいずこに -5ページ目

27時のシンデレラはいずこに

誰にも大事な人はいます。それは既知か未知か、いずれかです。目の前にいたとしても、気づいているか、いないかは、案外、無自覚の可能性もあります。日常のふれあいの中で、そんな「1人」を発見できたら幸せです。

3試合で合計16盗塁という、驚異の機動力を武器に勝ち進んできた健大高崎。
2回表、6番・神戸がスライダーをセンター前のヒットで出塁すると、盗塁を企てます。
大阪桐蔭の捕手・森は、3球目・ワンバウンドの投球を無難にキャッチすると、素早い動作で完璧な送球。今大会1盗塁でスタートの悪くなかった神戸を刺しました。

このワンプレーは、このゲームでのポイント。健大高崎の脚力が、藤浪-森のバッテリーに通用するかどうかを占う場面でもありました。

そのウラの大阪桐蔭。4番・小池が三塁手右を速い打球のレフト前ヒットで出ると、5番・笠松が三塁前へ転がし、送りバント成功。 6番・安井の、ショートへの緩いゴロが内野安打となって、一塁セーフ。1アウト一、二塁。拡大したチャンスに、7番・白水は左打席に立ちます。スイッチヒッターなのに、左投手・三木に対し右打席を選択しません。おそらく練習で左打席が好調なのでしょう。
この場面、初球の外角低めカーブを引っ張り、一塁手の左を痛烈に破るライト前ヒット。先制点 。打席の選択判断は正解だったようです。

今日の藤浪は変化球を狙われたようで、3回までの打たれた3安打はいずれもスライダー。直球は、3回に竹内を外野フライに仕留めた151キロが最高スピードでした。軸足がほんの少しインステップしますが、上体が強い点と、身のこなしが器用で、大柄な投手にありがちな、脆さをマウンドでは感じさせません。

6回表では、ワンアウトから四球の走者を許しますが、2回に森に盗塁阻止された影響か、健大高崎は警戒しスタートを切れず、結局、動く作戦をとれずに、5番・大沢に強打させ、二塁ゴロの併殺打に終わりました。

守りで目論見どおりに試合を進める大阪桐蔭ですが、大きなチャンスを作りながらも、追加点を思うように取れません。
5回は1番・大西の右中間2塁打で走者が本塁突入しますが、中継プレーによる好返球で、憤死。6回のランナー二、三塁の場面は、先制点を叩き出した白水が見送りの三振。
試合の決着は終盤へ。

8回表の健大高崎は、「なんとしてでも塁に出たい」と試合前、足を活用したがっていた1番・竹内が、外角ストレートを、力一杯、流し打つと、高く上がった打球は思いのほか伸び、左翼ポールを巻くソロ本塁打。同点。
足でなく、バットで、1-1の振り出しになりました。

思いがけず長打で追いつかれた大阪桐蔭の8回ウラ。『目には目を』ではありませんが、『一発には一発』。
3番・左打者の森が腰の入ったフルスイングで左中間席へ、突き放つ本塁打を放つと、1死後、今度は今大会好調の2年生・笠松がレフトオーバーの本塁打。自身、今大会2本目の本塁打。一発攻勢で、3-1にしました。

9回表、藤浪は投球数が120球を越えても、148キロのストレートを投げ込みます。先頭の神戸は、藤浪に9球投げさせますが、最後は空振り三振。四球の走者を出しますが、落ち着いて後続を断ち、3-1で、完投勝ちしました。

自慢の足を封じられ、機動力野球をまったくさせて貰えなかった健大高崎。2回に企てた盗塁を阻止されたシーンがこの試合のすべてでした。1回戦で同じ関西の強豪・天理を撹乱し、倒した勢いを、準決勝ではほとんど発揮することなく、甲子園を後にすることになりました。

夏2度の制覇の大阪桐蔭は、春・選抜大会、初の決勝進出。
本来の4番打者・田端を骨折で戦力から失いましたが、逆転する勝負強さと、長打力を秘めた打棒は、健在。大会ナンバーワン投手・藤浪に、『優勝投手』の肩書きが付くのに、あと1勝となりました。
愛知県以東の4校が登場するとはいえ、ベスト4を決める残りの2試合。日曜日とあってか、曇り空の中、3万人を越える観客がスタンドへ足を運びました。

このカードは、昨秋の明治神宮大会で光星学院が愛工大名電を6-5で破っており、再度の対決で選手たちは意識していたようです。

愛工大名電の濱田投手は、今大会ナンバーワン左腕の前評判で大会に臨みました。宮崎西を3安打14奪三振で完封。履正社には1失点の完投勝利。最速148キロのストレートとスライダーを中心に、綺麗なフォームで投球します。

その好投手に、1回ウラ、強打の光星学院が襲いかかりかます。2死から一本足打法の3番・田村が、高めストレートを力強く捉え、センター越えのツーベースヒットで出塁すると、 4番・北條は、濱田の得意なスライダーがやや高めに入って来たのをシャープなスイングで引っ張り、レフト前へクリーンヒット。あっさり先取点を奪いました。

1点を追いかける愛工大名電の4回表。光星学院の先発・城間は、本来、二塁手ですが、1回戦で北照に完封勝ちをしており、 好調。
その城間のスライダーを、3番・中野がライト前ヒット。4番・佐藤の二塁ゴロと、5番・松岡の一塁ゴロで、中野は三塁まで進みます。
そして 6番・鳥居はカウント1-1からの低めスライダーを右中間へスリーベースヒット。1-1の同点。

中盤は愛工大名電の濱田がスイスイ調子を上げ、出塁もほとんど許しません。2回以降、ここまで無安打で、8奪三振。

好調な濱田のリズムで愛工大名電へ向いている流れを変えたい光星学院は、5回に投手交代。
先発・城間に代わり、2回戦・近江戦で8回2/3を投げた、エース・金沢が2番手としてマウンドへ。
このスイッチは、じつは昨秋の明治神宮大会の決勝で愛工大名電に勝利した時と同じ継投リレーのパターン。仲井監督は試合前に、城間-金沢の継投策を明言していたそうで、予定の行動でした。

そして6回表、愛工大名電は先頭の4番・佐藤が三遊間を痛烈に破るレフト前ヒット。 5番・松岡は初球を三塁線に転がし、送りバント成功。次は、前の打席で同点打を放っている 6番・鳥居ですが、高めから鋭く曲がるカーブに見逃し三振。2死二塁。
7番・中村はカウント1-2から外角球を引っ掛けた、三塁線へのゴロ。ダッシュしたピッチャー金沢が掴んで投げた一塁への送球が左へ逸れ、ファウルゾーンを転がる間に、二塁走者が一気にホームへ還ってしまいました。
2-1、逆転。

勝ち越し点をあげた場面、記録は、内野安打と失策。なおも2アウト一塁で、さらに突き放したい愛工大名電は、8番・濱田の2球目、一塁走者がスチールを敢行。しかしキャッチャー・田村が落ち着いて二塁へ好送球。タッチアウト。
この回は2点で終了しました。

今度は追う立場に立たされた7回裏、 光星学院の攻撃。 5番・武田は右中間へ運ぶツーベースヒット。6番・大杉はピッチャー前に転がした、送りバントが成功。 7番・城間は2球目の外角ストレートを右へおっつけ、一二塁間を破るライト前ヒット。武田が還り、同点。2-2。

光星学院は昨年、愛工大名電との対戦時、終盤に濱田を打ち込んで勝利しています。
その再現をしたい8回裏の攻撃。
2番・村瀬が入って来る高めスライダーを、ライト線を破る長打で、ノーアウト二塁。
第一打席で2塁打を放っている強打者・田村の打席で、光星学院ベンチは、カウント0-1から二塁代走に関口を起用します。
これが的中。
昨秋の濱田との対戦で2本の二塁打を打っている田村は、ストライク2と追い込まれた後、インコースのストレートに詰らされながらも、センターやや後方へのフライ。出したばかりの関口がタッチアップで三塁へ。
4番・北條は、昨秋のこのカードで、決勝点となる三塁打を記録してる勝負強さも兼ね備えた強打者。強打かスクイズか、戦法の選択も難しい場面。濱田も出方をさぐりながらの投球。カウント0-3と劣勢になって内角ストレートにバントの構えに転じた北條。投球は打者の左足に当たり、デッドボール。しかし、北條はバットを出したように見え、愛工大名電のベンチが判定にアピールしても良かった場面でした。
いずれにしても、1死一、三塁になりました。
次の 5番・武田はスクイズの素振りもなくファウルで粘りますが、見逃し三振。
6番・大杉の2球目、光星学院の2人の走者がスタート。捕手も打者勝負に集中し、投げません。ダブルスチール決まって、2死二、三塁。じわじわと濱田を追い詰めてゆきます。

そんな小細工の効果が出たのか、6番・大杉に対しストライクが入らない濱田。カウントも3-0と不利になってしまいます。
そこでカウントをとりに行った133キロの真ん中ストレートを、左打者の大杉が腰の入ったスイングをします。
鋭い金属音を残し、打球はセンター右へ。愛工大名電の中堅手・松原がダイビングキャッチを試みますが、グラブは届きませんでした。
右中間を転々としてフェンスまで転がって行った打球を処理する間に、打った大杉までも本塁ベースを駆け抜けました。大会第13号のランニングホームランは、貴重な勝ち越し3ランとなりました。5-2。

3点を1イニングで返さないと敗戦となってしまう愛工大名電。今大会、初戦14安打、2回戦13安打で今日もここまで8安打と打線は好調。最後の攻撃になってしまうのか、9回表 。
先頭は、8番・ピッチャーの浜田。なんとか出塁したい気持ちでフルカウントまで粘りますが、最後は高めストレートに押されて、ピッチャーゴロ。9番・松原の打順。1回戦でも代打起用された松井を送り出しますが、ショートゴロ。1番・木村も2球目の高めストレートに手を出し、セカンドゴロ。万事休す。
結局5-2で、光星学院が昨秋に続いて、7年ぶりのベスト4を目指した愛工大名電を退けました。

昨夏、準優勝を果たした光星学院は、春の準決勝進出は初めて。青森県勢がベスト4に残るのもは、1956年の八戸以来56年ぶりの快挙です。

一方、敗れた濱田投手ですが、真上から見た投球フォームは、軸の乱れがなく、肘の使い方もギクシャクしておらず、素晴らしい投げ方です。終盤に力尽きる傾向があるみたいなので、体力強化が課題かもしれません。

それと、今大会の愛工大名電は、濱田1人しかマウンドに立ちませんでした。夏の愛知県大会、出場叶った際の甲子園でより上位を目指すなら、もう1人投手を養成しておく必要があるでしょう。
近代の高校野球では、1人の投手で全試合を勝ち抜くのは、不可能ですから。
大阪桐蔭が前評判どおりに投打の歯車が噛み合って臨んだ準々決勝。
しかし、注目投手・藤浪は先発しませんでした。マウンドに登ったのは澤田。藤浪とは19センチも身長が違います。

その立ち上がり、浦和学院は1番・竹村が流してレフト前ヒットで出塁すると、 2番・林崎には送りバント。これを澤田が好フィールディングで、二塁へ進めさせません。
でも3番・佐藤が初球、高めのスライダーを一塁手強襲の内野安打。一塁ランナーは一挙に三塁を陥れます。
1死一、三塁の場面で、4番・笹川。ここでも澤田の、高めの甘いスライダーをセンター前へ運ぶヒット。1点を奪います。

その後大きな局面もなく、1-0のスコアで推移し、後半に入ります。

先に動いたのは、浦和学院。
6回表の守りから ピッチャーを先発・山口に代わり、センターを守っていたエース・佐藤がマウンドへ。
1番・水本にヒットを打たれますが、まずまずの出来。

そしてそのウラ、大阪桐蔭も代打を送った都合上、投手交代。2番手はエース・藤浪。
エラーで出塁されますが、ダブルプレーで3者で退けます。

7回表、大阪桐蔭は先頭の 3番・森がライト前ヒット。 4番・小池は初球を三塁線へ送りバント。5番・安井の空振り三振で、2アウト二塁。 6番・笠松は、カウント2-0、有利な3球目の低めストレートをセンター返しのバッティング。2塁ランナーが還り、遂に同点に追いつきます。

しかし、そのウラ、4番以下の3連続単打で、ノーアウト満塁。浦和学院、再度リードのチャンス。

ここで、藤浪は力投を見せます。7番・吉川を外角低めのスライダーで空振り三振。 8番・石橋は、外角低め・150キロのストレートでの3球勝負──空振り三振。そして9番・緑川へは一転、スライダーで空振りの三振に仕留めました。

しかし、8回裏の浦和学院の攻撃。1番・竹村の二遊間へのゴロを二塁手が打球を弾くエラー。 2番・林崎のスリーバント失敗した後、 3番・佐藤は流し打ちのレフト前ヒット。
さあ、決勝点が欲しい浦和学院。終盤の大チャンスです。2アウト後、 5番・山根も三塁手の悪送球で生き、2死満塁。

味方のエラーで苦境の藤浪。
6番・明石への3球目は、高めのストレート。これをキャッチャー・森がなんとパスボール。三塁ランナー・竹村が労せず生還、勝ち越し。なおも2アウト二、三塁。
明石をカウント2-2から低めのスライダーでライトフライに討ち取り、3アウト。2者残塁。

バッテリーエラーで勝ち越し点を献上してしまった大阪桐蔭。絶体絶命で、最後の攻撃です。

9回表は、タイムリーミスした 3番・森からです。カウント0-1から、佐藤の真ん中に入ったカーブをライト線へ痛烈なヒット。しかし、二塁ベースを狙った走塁も、浦和学院の右翼手・笹川の好返球にタッチアウト。同点となるべき打者走者が憤死。なんとも惜しい1アウト目。ドラマはこのワンプレーで幕を閉じたかにみえました。

続く 4番・小池は気力を奮い、粘って、フルカウントから低めに外れるスライダーもよく選んでフォアボール。1アウト一塁と希望をつなげます。
5番・安井も落ち着いて視えましたが、カウント0-2と追い込まれました。そして勝負に出た佐藤の外角ストレートを左中間へ打ち返し、深々と破る長打。1塁ランナー、小池が一気に生還し、2-2の同点。このツーベースヒットで、なおも1アウト二塁。
6番・笠松、空振り三振で2アウトになるものの、 7番・白水は、2球目の外角ストレートをセンター前へ。2塁走者がホームを踏み、逆転。
大阪桐蔭は遂にゲームの主導権を握りました。

この試合、初めて追う立場になった浦和学院、9回裏の攻撃。 まずはノーヒットの7番・吉川には代打・木暮を起用。2球目の高めスライダーを引っ掛け、サードゴロ。1アウト。
8番は、9回から守備に入っていた安室。藤浪の外角低めストレートにバットが合わず、空振りの3球三振。2アウト。

9回表の開始時とは逆に追い詰められた浦和学院。
9番・緑川は、外角スライダーを巧く叩いてセンター前ヒット。2アウト一塁。
1番・竹村は、昨秋.383の打率を残した好リードオフマン。カウント1-1から内角低めスライダーを鋭いスイングではじき返し、二遊間を破るヒット。2アウトながら、一、二塁。同点のランナーが得点圏、そして逆転サヨナラ勝ちとなる走者までが出ました。

浦和学院は昨秋の関東大会の王者。対するは、今大会ナンバーワン右腕の長身・藤浪。

2番・林崎は、藤浪の初球・外角ストレートにバットを振ります。しかし、球威に差し込まれ、ショートへのゴロ。遊撃手・水谷が捕って2塁へ送球、セカンドフォースアウトで3アウト。
ゲームセット。

3-2で大阪桐蔭が接戦を逆転で制して、ベスト4へ一番乗りを決めました。
同校は夏の選手権大会の覇者に2度なっていますが、春の選抜大会の準決勝進出は初めてです。

注目の藤浪はリリーフ後、失点するなど絶好調ではありませんが、ストレートとスライダーを、全身を使っての投球フォームから投げ込み、高校生レベルを超えています。今日は150キロのスピードも出ました。
勝負強さもかなりあるみたいで、次戦以降も目が離せません。