幻の名店その2「飲むか聴くか」 | あうんのあ

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何年もほったらかしで、気まぐれに更新するので、もしお時間があればお立ち寄りください的なブログです。

今から10年以上前のことです。

当時の職場の同僚が結婚することになり、
祝賀会の二次会で、久しぶりにすすきの辺りに繰り出しました。

学生時代に飲み会で集った店はすでになく、
案内してくれる方についていくと、
大きな交差点に面したビルの地下に行き着きました。


「とりあえず、気に入ると思うよ。」
と言われ、店内に入ると、
街の喧噪とは打って変わって、落ち着いた雰囲気が漂っていました。


木製のちょっぴり重そうなテーブルセットが並び、

ドイツ風居酒屋といった風情。


さっそく、ビールとソーセージの盛り合わせ、ザワクラウト

など頼んでしばらくすると


店の奥から、

バイオリンやチェロなどを持った一団が登場しました。


「屋根の上のバイオリン弾き?」

実際には、地下のバイオリン弾きですが・・・


突然の登場にびっくりしつつ、笑っていると、

店を紹介してくださった方が、


「この店のバンドは、リクエストに応えてくれるよ。

1曲ずつ、好きな曲を書いてみよう!」


机の上に、ペン立てがあり、小さな紙片とペンが数本入ってました。


私は、ウィーンの居酒屋よろしく

シュランメルの

「ウィーンはいつもウィーン」

と書きました。


行ったことはありませんが、

音楽の都ウィーンの居酒屋では、

バイオリンを中心とした小さなバンドが生演奏を聴かせてくれるとか。

ちょっとした旅行気分を味わってみたくなってのです。


何をリクエストしていいか、分からない、と言う人もいて

もう1曲私の好きな曲を書いて良いと言われ、


当時ウイスキーのCMで人気のあった

「リベル・タンゴ」

も書きました。


CMでは、ヨーヨー・マがうっとりとチェロを奏でていて

飲みながら聴くのに相応しく思えたからです。



ひとしきりリクエスト用紙が集まったところで、

ビールと食べ物が届き、


しばし生ビールとドイツ料理を堪能していると、


ふいに空気が静まり、

店の一角に、先ほどのバンドが集まりました。


そして、奏で始めた曲は


哀愁とも、祈りとも取れる、エキゾチックなメロディー・・・


ミュージカル

「屋根の上のバイオリン弾き」の劇中の有名な曲をメドレーで

ほんのワン・フレーズずつ

挨拶代わりに聴かせてくれました。


用紙には書いていないはずなのに、

私のふざけ半分の一言に、

ちゃんと応えてくれたのです。


それだけで胸がいっぱいになってしまいました。


その後も、たくさんのお客さんのリクエスト曲に混じって、

私のリクエストにも応えてくれました。


とても陽気で音楽好きなウィーン気質を代表する曲

「ウィーンはいつもウィーン」は、晴れた空のような軽やかさ。

3大ウィーン名曲の中でも、

私は、この曲が一番好きです。


一転、

「リベル・タンゴ」は、

都会の宵闇に忍び寄る悲哀と切なさを、

情熱を込めて叩き付けるように演じ切りました。


聴き入ってしまうと、

涙が止まらなくなりそうで


ビールの酔いに任せて

陽気な振りをしていたのを、今でも覚えています。


その後も、何度か足を運びましたが、

紹介してくださった方が転勤されると、

行くきっかけを失い、


久しぶりに行ってみると、そこは、別の店になっていました。



数年後、バンドだけ、店の名前をそのまま名乗って

演奏活動を続けていると聴きましたが、

今ではもう、バンドすら確認することができませんでした。


店の名前は、


「ミュージック ビヤ ホール ライオン ローレライ 」


今でも、すすきの交差点を通ると、地下をのぞいてみたくなります。