ロケ先で、衝撃を受けました。

また、大切な仲間が逝ってしまった。降籏康男監督。

私にとってかけがえのない2作品、1987年の「別れぬ理由」、そして1989年の「極道の妻たち~三代目姐」の監督。そして、古くからの同志です。

マスコミに発表した、私のコメント全文です。

 

突然の訃報に、驚いております。東映時代の『続・王将』が初めてお会いした作品です。その時、チーフ助監督だった降旗さんを将棋の先生と間違えた事を、何十年経っても言われ続けましたね。プライベートな海外旅行中にバッタリ会ったりして、「いつかご一緒しましょう」と言って実現したのが『別れぬ理由』でした。ヌードシーンもあり、「胸も無いし…私には無理なんじゃないですか?」と聞いたら、「それが三田さんなんだからいいんじゃない」と。とても無口な方でしたが、クリエイティブな事では決して妥協しない、譲らない方でした。『別れぬ理由』で、津川雅彦さん演じる夫と、不倫後の夜の布団の間を空けて、ズラすかズラさないかでも、本気の喧嘩みたいになりましたね。『極道の妻たち 三代目姐』の時は、丹波哲郎さん演じる三代目の葬儀シーンをどうしても撮ってほしいと私から夜中に電話で直談判して、受け入れてくださいました。降旗さんとのクリエイティブな意地の張り合いは、結果、私にとってかけがえのない作品となりました。もう一度ご一緒したかったですね…残念でなりません。

 

 

そして、同じ日に前後して知らされた東映のプロデューサー・坂上順さんの訃報。

「新幹線大爆破」や「剣岳 点の記」、降籏監督や高倉健さんと組んだ「鉄道員(ぽっぽや)」や「ホタル」で知られる名プロデューサーです。

去年の1月には、私が頚椎硬膜外膿瘍の退院明けすぐに出演したドラマの収録現場(にっかつ撮影場)に、突然姿をみせ、まだ首のコルセットも外せないままの私の顔を見て「あ~よかった!」と心底安堵してくださった。優しい兄の様な方でしたね・・・・。

私の一番の後悔は、「三田ちゃんの主演で」とオファーしてくださった坂上さんの企画に、その時の色々な事情から出演できなかった事・・・・もう取り返しがつかないですね。

いつも私の舞台を・・・前触れもなく観に来てくださった。「今日お見えになると言ってくださったら、良いお席をご用意したのに」と言っても、笑いながら「だから知らせないの。自分が観たい時に来るから、気にしないで」と。そういう方なのよね・・・。

つい先日、4月12日の三國さんの七回忌でも、お元気なご様子でお会いしたばかり。

まだ信じられない思いでいっぱいです。

 

長く続けてきたからこその喜び。ともに戦い、手を引いてくれた仲間や先輩たちの残した思いが、私の心の奥底を突き上げてきます。避けられない別れの寂しさも受け止めて、私の女優人生はこの方たちの思いを受け継ぎ、今、ともに歩んでくださる「若い力」とともに全身全霊で全うしなければならない・・・。

 

お二人のご冥福を、心よりお祈りしています。

三田佳子