電話しても : 村田和人   1982


   村田和人が大腸ガンからの転移性肝臓ガンで突然亡くなってしまったのは2016222日のことだった。

   一年間ほどの闘病だったが彼はガンを意識しながらも音楽活動を続けていた。

   凄い勇気だと思った。

   穏やかなその表情に彼の紡ぎ出すメロディからは想像すら出来ない闘志だったと思う。

   本日はシティポップの旗手として活躍した村田和人の楽曲を振り返ってみたい。



   デビューが1982年だから若手のイメージだったが実は1954年生まれだ。

   ユーミンや杉真理らと同い年である。

   1976年頃に渋谷のヤマハエピキュラスに出入りしていてバンド「ALMOND ROCCA」を結成、大学2年のことだった。

   ヤマハスタッフの好意でデモテープを作り

   ヤマハの関係者から様々なミュージシャンや音楽関係者を紹介して貰っていたものの、芽は出なかった。

   が、エンジニアからフリーのプロデューサーに「いい曲が書けていいヴォーカルがいるバンドがある。」と紹介を受けてプロデューサーから村田は「君たちいいから、アルバム作ろうよ。」と言われたのだが、「あなたじゃダメ。僕らをプロデュースできるのは山下達郎くらいじゃないかな」と強気に断ってしまう。

   そこでそのプロデューサーは「じゃ、達郎くんを紹介するよ」と言うことで、トントン拍子に話は進み、山下の所属するRVCレコードで面会は実現した。

   一通りの話をして村田は持ってきたデモテープを達郎に渡したが、そこには後々彼のデビュー曲となる♫電話しても   が入っていた。

   その時達郎とその胡散臭いプロデューサーは次のアルバムは六本木のピットインで録ろう!と言う会話をしていたことを村田は記憶している。

   それが'78の山達さんの名盤「It's a Poppin' Time」になったことは言うまでもない。

   それでもデビューへの道を模索するが、村田が山下との間にプロデューサーを入れることに納得いかず、かといって直接依頼したかった山下の電話番号も聞いていなかったため連絡が取れないまま、デビューの話は立ち消えになってしまった。   

   しかし、デモテープを聴いた山下は村田を高く評価しており、「もし、このシンガーが世に出なかったら「電話しても」を自分で歌おう」と思ったほど惚れ込んだという。



   結局村田は大学卒業を機に、ヤマハに入社して四年ほど営業でお茶を濁していたが、バンドデビューへの意欲断ち難く、バンド「ALMOND ROCCA」を再結成して再びデビューを模索する。

   ライブで再びRCAのディレクターの目に留まり山下と再会する。



   その時に山下から自分で歌おうとしていた!という話を聞かされたが、「出てきたのなら自分で歌いなさい」と言われたがデビューに当たり当然山下がプロデュースするものと思われたが、ディレクターは山下イディオムの村田に山下をぶつけたら単に焼き直しに終わるから、と言うことから村田の好きなアレンジャーを立て、A面を鈴木茂、B面は井上鑑に依頼した。

   ディレクターからアルバムの進行状況を聞いた山下は試聴したが、それを聴いて村田に「村田君はこれで本当に満足してるの?」と訊いた。

   村田は曲によってはこれでいいのかな?って思うものがある、と正直に言ったら「じゃあ、気に入ってない曲を、僕がやる。」と言い♫電話しても   はそんな経緯から鈴木茂arrVer.  と山下arrVer.の二つが存在する。

   19826月にデビューアルバム「また明日」がリリースされた。



    



♫電話しても    ココをタップする


   1984年には3作目となる「My Crew」がリリース。



   このアルバムはシティポップの金字塔、と言われている。

   村田が他人に提供した曲を中心にアレンジ迄こなしたセルフカバー集としてファンの間では人気が高い。

   これを聴くと既に村田は山下に頼らずとも自分で編曲できるだけの力が備わっていることが感じとれる。

   Summer Vacation   は最初川島なお美で録音されたが村田は詞も編曲も大幅に変えて竹内まりやとのデュエットがファンのみならず話題になった。

   尚、この曲には山下達郎と竹内まりやのデュエットVer.と言う貴重な音源も存在してユーチューブで聴くことができる。




夫婦Ver. ココをタップする




オリヂナルVer.  ココをタップする


   アルバム「My Crew」からはシティポップの代表曲99選として木村ユタカが編集した「ジャパニーズシティポップ」の中で最も質の高いシティポップに選ばれた♫あの波をつかまえて   も収録されており興味が尽きない。


   慈味溢れるバラードの逸品。

   5人編成で一発録りされたそうで、ライヴ感溢れる演奏が実に心地よく、村田和人としては珍しくソウルフルなテイストなのも新鮮。

   歌と絶妙に絡む山下達郎のギター、中西康晴による"黒い"ハモンドオルガンが素晴らしいムードを作り出している。

   ノスタルジックな歌詞が、夜明け前の暗い浜辺へと優しく誘う。

   尚、村田和人のデビュー曲♫電話しても   にはアンサーソング♫電話しなくても   と言うのが存在する。


word:村田和人


電話しても想うことが ひとつも言えないまま

二人の時は過ぎて 別れの言葉を言うだけ

明日また会える


優しい風になびく髪は 心うずく僕を誘う

こぼれ落ちた光る君の 微笑みに戸惑う夏の日


きのう忘れていた この恋も 今は思い出せる

揺れていた心さえ 静けさを取りもどす


きのう忘れていた この恋も 今は思い出せる

揺れていた心さえ 静けさを取りもどす


電話しても想うことが ひとつも言えないまま

二人の時は過ぎて 別れの言葉を言うだけ

明日また会える