伊坂幸太郎『オーデュボンの祈り』 、『グラスホッパー』 | スライダーズおやじ

伊坂幸太郎『オーデュボンの祈り』 、『グラスホッパー』

図書館の本 多分ネタバレなしです。
ちょっと経っちゃいましたが、立て続けにこの二冊を読みました。

『オーデュボンの祈り』は一応デビュー作ってことになるのかな?
なんか、現在の作品と比較すると文体も緩いし、推敲にも若さがあったし、まあそれはそれ。
あと、ところどころに細かいツッコミどころ(カオス理論の例に上げた記述がおかしいとか、ビクターの犬は音楽聴いてるわけじゃないぞとか、・・・あとまだなんかあったな)
けど、面白く読めました。
喋るカカシってのがいいですね。細君はこの作品、すごくよかったといっていました。逆に彼女が「うーん・・・」と言っていた『グラスホッパー』の方が、僕には面白かったです。

蝉っていうナイフ使いがなーんかよかったなー。好きなキャラクターです。自分の環境が変わったことで、重荷が移動した際の気づき方がいいですね。

亡霊たちの言動の使い方もすごく論理的に練られていて、リアリティーがあったと思います。
例えば、鯨が物理的に知らないことは知らないとか。亡霊が与えてくれた情報は、鯨の潜在意識が算出できる範疇であることとか。

幻覚が見える(幻聴が聴こえる)という精神病の方たちも、自分の知らないことは知らない。例えば、今日の英国大衆新聞The Sunの一面トップ記事は何? と聞いても絶対に当たらない。潜在意識にある情報の組み合わせを見せてくれるだけらしいです。連中はせいぜい「テレビつけてみな。面白いニュースやってるぜ」と言うくらいのもんでしょう。

スズメバチの二人はちょっと強引かもだったけど(笑)

何もかもが終わったあとに清涼感がありました。いい作品です。