kripton SETTEN PRO




接点復活剤の類は結構使って来た。


特にクレやケイグは優秀で、オーディオ用ならケイグ、充電コネクターなどにはクレで間違いない。


小学生時代、ファミコンのカートリッジの接触には皆頭を悩ましたものだろうが、当時この数百円の缶が家に有ればと考えてしまう。



日常生活で言うとiPadやiPhoneのコネクタには接点の摩耗劣化を防ぐ為、定期的に接点復活剤を塗布している。


これらは汚れや酸化層を落とし電気の流れを安定させてくれるだけでなく、摩擦による接点の摩耗も防いでくれる。


SETTEN PROはそんなシリコン系の復活剤と違い、オイルである。


スクワランオイルは化粧品でも使われる酸化に強いオイル。酸化に強いということは、裸の銅線など酸素によって変色してしまう様なところに塗布しておくと、酸化を防いでくれる。


もちろんオイルなので潤滑油としても機能する。スピーカー端子などぬるりと締まって行くので、締め過ぎには注意である。


スクワランオイル塗れば音が良くなる…と言うより、酸化による音質劣化を防ぐ役割が大きい。


本当に良いものならメーカーが採用するはずでは?…と思ったらアクロリンクの7N銅はスクワランオイルを塗布しながら撚られていると言う。


オーディオメーカーのスクワランオイルには通電性の高い粒子が添加されている。


本来電気を通し難い油膜を張って電気の流れが安定するのは不思議だが、油膜内に通電する粒子がある事で更に通電性が上がる。


本来スクワランオイルに洗浄効果は無いが、添加する粒子が研磨剤として機能し、接点表面を研磨し、残ったミクロのスキマに残留し通電の助けとなる。


樹脂を侵す、ハンダが付かないといった欠点もあるので使用する場所には注意が必要である。





音質



小生のシステムは接点が多い。


バイアンプ、クロック、DDCとただでさえ箱が多いので、それらを繋ぐケーブルも多く、端末処理も自分でしている箇所が多いので余計である。


本来は端末を分解して銅線の裸部分に塗るべきだが流石に面倒でとりあえず、電源プラグやYラグ、インターコネクトケーブルなどの接点に片っ端塗布してみた。


因みにオイルは薄く塗る程良い。厚塗りすると接点からはみ出し、ホコリなどの汚れを集めて逆効果となる。大袈裟な話、ティッシュなどで拭き取っても効果はあるらしい。


SETTEN PROは非常に高価である。クレの接点復活剤は220mlで450円程度なのに対し、SETTEN PROは2mlで7000円程。


なので綿棒で塗る事は勧めない。綿棒が大量のオイルを吸い上げて無駄に消費してしまう。綿棒は塗り過ぎてものを除去するくらいにしか使わない方がいいだろう。


1時間以上かけて目ぼしい接点全てに塗布したが、音を出すと湿り気を感じる。ウェットな質感である。


プラシーボの様な感想だが、高域の失われがちな微細な音がしっかり出ているイメージ。


思ったより音が変わる。この手のケミカルとしては屈指の変化量である。


ボーカルも生々しく好印象で、ハイの情報量メインで改善している。


ただ、高域がフォーカスされる一方、アコリバの単線ケーブルによって得た瞬発力のある低音の主張がやや慎ましく感じる。


印象としては金メッキをロジウムにした時の変化に近く、高域を良く通す分、相対的に低域が存在感が後退している。


ただ、冷たく高解像度なロジウムに対し、SETTEN PROのウェットな質感は艶やかさもあり金メッキ派も嫌いでは無いのではないか。高域が変に誇張される事もなく生々しさが出る。


ただ、小生は元々冷たい音が好きなので、こう言う音が嫌いな人にとってはどちらも冷たい音に感じるかも知れない。




実際の物理特性としても効果はあった。


小生の愛用するAIM電子の純銀USBケーブルとMUTEC MC3はコネクターの相性が良くない様で、再生中にケーブルに触ると音が途切れる程接点が不安定だった。これはゲイグゴールドでも改善しなかったのだが、SETTEN  PROを塗布すると簡単に改善してしまった。


念を押したいのだが、SETTEN PROは通電の補助と劣化防止が主な効能で、劣化した接点を復活させる復活剤とは違う。


最もおすすめなのは裸の銅線の端末処理で、似た製品をリリースするFurutechの動画でも銅線に塗布している。

次に無メッキ純銅端子。「メッキは不要なクセが出る!無メッキこそ至高!」と言う人に銅表面の酸化防止に勧めたいが、そう言う人はスクワランオイルはスクワランオイルのクセが出る!と騒ぐのかも。


何も塗らなければ電気を通し難い酸化銅になるだけだが、その度に磨き落としてこそ無メッキ派の鑑である。


電源プラグやバナナプラグの中には非常に差し込みが固い組み合わせもあるが、その潤滑にもオススメ。


高価なロジウムメッキが一度刺したらキズだらけに…なんて事をある程度防いでくれるし、Yラグ派の小生としても軽い力でヌルッと締まる感覚は好感が持てる。


良くも悪くも音が変わってしまうが、情報量自体は上がっている為全ての接点に塗布した上で音決めして行こうと思う。