Grand Prix 5000S TR



遂に満を持して登場したGP5000のチューブレスレディ。


突出して転がり抵抗が低かったGP5000に対し、20%転がり抵抗を削減していると言うが、それが本当だと、軽く5000km走るオールラウンドタイヤにも関わらず超軽量TTタイヤを差し置いて自転車史上最低クラスの転がり抵抗となる。


TT用タイヤは重量が軽く、転がり抵抗が低いが、対パンクベルトなど最低限しか内包せずトレッド面も薄いので、耐久性、対パンク性、グリップに難があり、グランツール200kmを走り切るオールラウンドタイヤとしては使えない。


GP5000S TRはあらゆる性能を保持しつつ、これまでコンチネンタルがレース用に供給していたCONPETITION LTDの半分に迫る転がり抵抗を実現している。グランツールの平均時速なら20ワットを削減するチートタイヤである。



レースでの優位性は疑いようも無いのだが、それでは我々アマチュアにとっても最強の武器足り得るのかが問題である。





転がり抵抗



チンコネンタルのデータが正しければ転がり抵抗は最強クラスであるが、ライバルがいない訳では無い。


ローリングレジスタンスドットコム(以下RRC)によると、GP5000クリンチャーの転がり損失は10.0W、チューブレスが8.3Wと一見チューブレスが有利であるが、ラテックスチューブだとチューブレスとほぼ同じ8.4Wまで低くなる。


つまり100gブチルチューブにはには1.6Wの損失がある事が分かる。


しかしこれはあくまで空気圧8.3bar、速度29.9kpmの値であり、例えば5.5bar/40kpmで前後輪の合計だと5.6Wと言う値になり、空気圧保持力が低いのにプロレースでラテックスが当たり前なのに納得させられる。




とりあえず、ラテックスチューブを使用した場合、GP5000のクリンチャーとチューブレスはほぼ同じ転がり抵抗なのである。


それでは真打ちのGP5000S TRはと言うと、なんとRRCの試験に置いて8.4Wうぃマーク!!


ってラテックスと同じやないかーいとずっこけてしまう。


全輪界が期待したニュータイヤが旧TLを越えられないとは肩透かしもいいところである。


これはトレッドの厚みを削ったアドバンテージを、シーラントの抵抗が相殺してしまったのだろう。



因みにRRCではリム幅を変更してのテストも実施しているが、18C22Cリムで0.1Wの差しか検出されなかった。


しかし、これはドラムを転がる試験機だからで、接地面の全長に差が出にくい為と小生は考えている。


タイヤの径と同程度のドラムと違い、実際の地面でナローリムの接地面は大きく縦に伸びるので、ワイドリムによる転がり抵抗の改善幅は決して小さく無い値になるはずである。






重量



チューブレスレディタイヤはシーラントの使用が欠かせない。


しかし、シーラントを使えば結局重く、転がり抵抗も増加してしまう。


最近のシーラントは優秀で釘を踏んでも立ちどころに穴を塞いでしまうのだが、これが必ずうまくいくとは限らず実際はスローパンクが止まらなかったり固まったシーラントが空気圧で飛んで行ってしまうなんて事も多い。


小生はチューブラー時代から幾度となくシーラントを使用してきたが、薄いラテックスを塞げた事はほとんどなく、実際それほど対パンク性能が突出しているのかは眉唾である。


TL295gだった重量は250gまでダイエットしたが、シーラントを30cc入れると280gとほとんど旨みは無い。



一方小生が現在使用しているTPUチューブのrevoloop  ultraはラテックスと変わらない転がり抵抗ながら24gであり、クリンチャー225gと合わせても僅か249gである。


チューブレスでは9gのバルブも必要になるのでS TRより1輪当たり40g軽くすることが出来る。


TPUチューブの対パンク性はさすがに低いだろうがヒルクライムやクリテリウムでは大きな武器になるだろう。


TPU+クリチャンに次いで軽いのがGP5000S TRと言う事になるが、シーラントが転がり抵抗を増加させる事を考えると個人的にはノーシーラントのTLを使いたくなる。


しかし、TLはフックレス未対応なのに加え、シーラント無しではスローパンクが治らない事も多いので、3種のタイヤのどれを選ぶかは人それぞれと言う事になりそうである。


ZIPPのフックレスリムは現在40mmハイトのリムで355gを実現しており、チューブレスとシーラントの重さを十分相殺出来るとこまで来ている。


これまでグランツールで使用されてきたチューブラーはタイヤ300g+リム400g程度だったので、ようやく重量的にもチューブレスがチューブラーを追い抜いた形だ。


因みにRRCではGP5000S TRはトレッドが少々薄くなっているのが残念だと述べている。


これは、ワイドリムによる低圧化で接地面が横長になり、踏み抜きリスクが減った事に加え、摩耗する面積が大きく横に広がった為、コンチネンタルが必要と考える耐久性と対パンク性をこの薄さでも満たせるとの判断だろう。


これまでのタイヤは潰れ量が多く、トレッドが縦長に大きく接地していたため、中央のみが摩耗していたのだが、ワイドリムタイヤはケーシングの変形量が小さく、接地面付近のみが潰れるのでトレッドを幅広に使えるようになった。



もちろん肉厚な旧GP5000をワイドリムで低圧で使えば、更に高い対パンク性と耐摩耗性が手に入る。


GP500023cでも5000km以上余裕で持つタイヤだったが、ワイドリムと28Cで実質30mmを超える幅になると一体何キロ走れるのか非常に興味深い。






現在ベストなタイヤ



小生が現在使用しているのはGP5000クリンチャーの28CとミシュランPOWER TIME TRIAL 25Cである。


上記にてTTタイヤは耐久性、対パンク性、グリップに置いて著しく性能が劣ると述べたが、このTIME TRIALに関してはそのようなネガをほとんど感じた事が無い。


ミシュランの軽量モデルは劇的に軽い訳では無いが、タイヤとしての性能を保ちながら、効果的に転がり抵抗を抑えてる。


転がり抵抗はGP5000クリンチャーが10.0Wなのに対して8.6W100gブチルチューブでこの値なので、ラテックス及びrevoloop  ultraを使用するとCORSA SPEEDに肩を並べると思われる。




実測は198g202gで平均200grevoloop ultraチューブと合わせても224gGP5000S TRのシステム重量290gと比べても前後で130gのアドバンテージがある。


もちろん更に軽いタイヤはいくらでもあるが、転がり抵抗も含めるとヒルクライムを含めたほとんどのジャンルでは最速となるだろう。


「クリンチャーがベスト」と言うミシュランの主張に違わない完璧なタイヤだが、近年は残念ながらクリンチャーが使用出来ないリムも増えた。


ビートが弱いクリンチャーをフックレスリムに装着すると、ビートが均等に引っ掛からず、浅い部分から外れてしまうのだ。


因みにPOWER TTには28cのラインナップが存在しない。


25C28Cでは推奨空気圧が大きく異なるので、小生としては乗り心地の面で28CGP5000クリンチャーも良く使用するが、0.5bar低く設定しているGP5000は、POWER  TTにかなり劣るはずなのだが、タイムを見ると意外と速い。


横幅は1mmも変わらないのにハイトが2mm違う為、エアロダイナミクスで想像以上のアドバンテージがあるのかも知れない。GP5000はエアロタイヤとも言われるが、確かにこのタイヤは転がり抵抗だけで語るべきではないようだ。





30Cの追加



GP5000S TRのラインナップで最も魅力的だったのが30cの追加である。


小生は25C28C32Cとテストしたが、前28/32cでリアのハイトが4mm変わってしまうとハンドル落差もサドルセットバックも変わってしまうので正直扱いづらかった。


前後同じタイヤでもいいのだが、ロードバイクは重量配分がリア寄りなので、走行中リアタイヤだけが大きく潰れているのが気になっていた。


高速域では空気抵抗を受けてフロントは浮きリアの荷重は増える。


フロントの倍程の荷重を受け持つリアを太くするメリットは大きく、後輪だけ25c30cにすると3W以上のアドバンテージを得られる計算になる。


逆に荷重の少ないフロントを重く太いタイヤにするメリットはあまり無い。荷重が乗って無いので転がり抵抗の変化も小さくエアロ面では大きくマイナス、重量も増えるといい事が無い。


フロント28、リア30なら前傾も少なく、推奨空気圧も前後同じ程度になるので非常にバランスが良い。


30Cと言うサイズにまだ抵抗がある人は多いだろうが、実はGP5000GP4000からかなり細くなっており、GP400025Cで実測27mmほどあったのに対し、GP500028cは内幅17mmリムでは28mmに達しないほど細い。


30Cで他社の28C程度のサイズと思われるので、それほど極太なタイヤと言うわけでもないのである。



転がり抵抗で有利なワイドタイヤだが、エアロダイナミクスでは不利と言われており、風をモロに受けるフロントはもちろん、バイク全体で見ると、ライダーが乱した空気を整流する後輪もエアロダイナミクスで重要な部位だと小生は考える。


後輪自体の空気抵抗は少なくても、後輪が整流板となってライダー後方に出来る過流の不圧を軽減する事で、トータルでの空気抵抗は減ると言う訳で、ENVEROVALもリアハイトを高くするのはこの為だ。


リムで整流した左右の空気はタイヤが細い程キレイに合流するのは言うまでも無い。


実際太いタイヤの転がり抵抗が優位かエアロダイナミクスを取るべきかは非常に悩ましい問題である。


しかし、25Cで実測幅29mmに達する事を考えると、幅は十分に感じる。


空気圧を下げても低い転がりを得られる事から太いタイヤのメリットは荒い路面の転がり抵抗と乗り心地と言う事になる。





GP5000S TRは買いか?



最強では無いかも知れない。しかしトータル性能の多角形グラフの面積では最大クラスだろう。


初めて履く人は乗り味の硬さに面食らうかも知れないが、100kmも走ればかなり柔らかさが出てくる。


それでもしなやかさと言う一点ではライバルに一歩劣る。


しかし、これだけエアロダイナミクスに優れ転がり抵抗が低いタイヤはなかなか無い。


クリンチャーよりは若干重いものの、軽量なフックレスリムを選ぶことでトータルウェイトの増加は十分抑えられる。


余程の理由が無い限り、他のタイヤを選ぶ理由を探すのが難しいタイヤだと言える。




↓ようやく28Cを購入出来たがもう在庫が無いようだ。