小生は以前202クリンチャーを所有、454は試乗のみだが、ZIPPのホイールを一言で言うなら“質実剛健”である。
ZIPPのホイールは極めてバランスが良くハイスペックなのだ。
↑思えば1時間で何キロ走れるかと言う長年の挑戦で39.9kmと言う小生のベストレコードを叩き出したのが202で、その後BORAやENVE、フルクラム、ROVALのいずれもそのレコードを塗り替えるには至っていない。
大抵のホイールは不満点もあるものである。
ハブの動きが渋かったり、硬くて反応がいいけどケツが割れそうなほど乗り心地が悪かったり、カタログ数値より100g重かったり、ブレーキすると断末魔を上げたり、軽いけど煽られやすかったり、横風が吹くとスピードが出なかったり…。
まあ最初の4つは同じホイールなのだが。
ZIPPはすごい。
ZIPPを買ったらまずスポークを指で弾いて欲しい。
片側のスポークが全てキレイに同じ音を奏でる。
これは当たり前のようでなかなかない。
カンパやフルクラムもキレイにフレを取ってあるがさすがにスポークの音色が揃っていた事は一度もなかったし、リムの精度のせいか振れ取り台で調整していってもキレイに音が揃うと言う事はなかった。
ZIPPのリムは極めて硬く精度が良い。そしてそれをしっかり組み上げてある。
だから走った時の精度感と言うか回転に対するムラのようなものが少ない。
リム単体で見るならENVEに及ばないかも知れないが、ZIPPはホイール屋、ENVEはリム屋と言った感じで、そのこだわりはモデル置きにハブを再設計する事からも伺い知る事が出来る。
リム
353の最大のニュースは1255gと言う重量である。
小生が使用して来たチューブラー、デュラC35が1339g、BORA 50が1215gと比べても全く見劣りしない重量で、もはやチューブラーとはなんだったのかと思わせる軽量ぶりである。
リム重量は恐らく300g台後半だろう。
数年前の303クリンチャーが500gだったのを考えると数年で約2/3に軽量化された事になる。
このリムは内幅25mmと極端なワイド仕様でクリンチャーの使用は非推奨となる。テスト時クリンチャーではビートが外れる案件があったとかで、チューブレス専用に設定されたようである。
小生は現在世界最高レベルの転がりと実用性を兼ね備えたミシュランTTの25Cを愛用しているが、これが使えないのはかなり痛い。…と言うか小生が353を使うなら意地でもTTを使うだろうが。
チューブレスで28cでそこそこ軽くてミシュランTT×ラテックスに近い転がりを実現出来そうなのはシュワルベだろうか。
王道ではGP5000となるのだろうが、個人的にはターンインで妙な引っかかりを感じる点と重さが気になる。転がりでもミシュランTTとは2watt以上の差がある。
内25mm幅のリムはどんなタイヤをはめてもウルトラワイドになる。その分転がり抵抗は減るのだが、そのアドバンテージ分空気圧を下げて振動吸収性に振るのが今のトレンドだ。
小生はずっと7bar以下にするのに抵抗があったが、現在は5barに落ち着いている。
C17リムで5barなので、C25ならZIPPが推奨する4barが最適だろう。
ワイドタイヤは乗り心地が良いとどこにでも書いてあるが、同じ空気圧同士で比べたら潰すのによりエネルギーを使うワイドタイヤの方が固い乗り味になる。
ハブ
ZIPPは実はハブも良い。ハブ軸を回すととても軽やかに回転し、セラミックに頼らないしっかりした設計が大事だと教えてくれる。
コグニッションのフリーが細かくなったとか言っているが、今回特に面白いのはリアブレーキ側がダブルベアリングになっている事。
ブレーキの反力に対抗して…と言う事なら数倍のブレーキを受け持つフロントがシングルなのはおかしい。
これはシンプルにダブルベアリングの方が実走時に抵抗が少ないのだろう。思えばGOKISOも左右ダブルベアリングである。
ロードバイクは重量を気にし過ぎるため過度に小さなベアリングを使いがちなのは良くない風潮だ。逆に正しく設計されたハブほどセラミックベアリングのメリットは小さくなる。
この超軽量ホイールにダブルベアリングを仕込んで来るあたり、ZIPPは本当に本質を分かっていると関心させられる。
速くする為に軽くするのに、いつのまにか軽くする為に速さを犠牲にしてしまうメーカーが多すぎるのだ。
真っ直ぐ走る
ZIPPの直進性はすごい。緻密な設計から来る高精度な回転に加え、風によってあおられないリムデザインが定規でも当てたような走行感を実現する。
横風を当てた時、測定器の上でZIPPより空気抵抗が低いホイールは割と多く存在するだろう。
しかし、ZIPPほど風の影響を受けず真っ直ぐ走るホイールはなかなかない。
それは1200g台に突入したホイールに取って最大の武器になるはずである。