今日は「ダンスの流行」について考えてみたい。1978/7アルバム「White」に収録されている。これまでに何度も書いたように陽水はダンスが苦手だったはずである。それが日ごと夜ごとダンスに明け暮れているとは何が起こっているのであろうか。「二人の距離は近く遠い」と言っているので、相手の女性はダンスが好きで踊っているようだが、陽水はそれに付き合わされているのではないだろうか。女性は前回「愛の装備」で書いたように再婚直前の石川セリさんであろう。
1982/12リリースのアルバム「LION&PELICAN」に収録されている「愛されてばかりいると」では、セリさんのステージを「笑いながら 踊りながら 転びながら 口の中へ 胸の中へ そそぎ込むワイン 」と表現していて、ダンスは得意なようだ。また、1977/4には「ダンスはうまく踊れない」を提供しているが、ダンスが苦手な陽水に対して、「苦手だったら私が教えてあげるから」とでも言って嫌がる陽水をダンスに誘っているのかもしれない。しかし自分では生来苦手だと思っていたことでも、状況にもよるであろうが、いざやってみると結構楽しかったと思えることがあるが、陽水のダンスはそのような様子が伺われる。
「ジルベ、マンボ、タンゴ、ルンバ、ボサノバ、ダンスの流行」。セリさんはどんなダンスも得意なのだろう。それに比べて陽水はこれまで苦手だと言ってきた手前、流行という言い方をしている。世の中ダンスブームで誰もが皆踊っているので俺もそれにつられてやっているだけだよと。「誰もかれもとても防ぎきれない あやしいリズムを」。ダンスのリズムは、陽水には馴染みがないようだ。「よろめいて つまづいて  かたむいて ころがって 楽しんで 苦しんで 踊りを続けて」。ダンスのリズムに合わせようと四苦八苦している様子である。
「背を向けて 立ち止まり ひきずって ごまかして いたわって うら切って」。セリさんとのダンスなら苦手だと言っていても楽しめる部分もあるのだが、そろそろ躍り続けるのも限界だと思っているようだ。楽しめる部分もあるが、やりたくないというのが本音ではないだろうか。