今日は「愛の装備」について考えてみたい。1978/7アルバム「White」に収録されている。陽水にしては珍しく希望に満ちた未来を期待しているような曲である。同じアルバムの「迷走する町」で書いたように1977/9大麻で逮捕され一般社会から隔離され歌手生活も続けられないかもしれないという窮地を乗り越えて、愛している女性と二人で掴んだものでもあるようだ。1978/8石川セリさんと再婚する直前の様子である。既に長男の准介さんが12月に生まれる予定にもなっていたのである。初婚の時には「闇夜の国から」であるから随分と違う心境であったようだ。「愛されてばかりいると」で書いたように陽水は石川セリさんに夢中だったことを考えると頷ける。
「太陽なら沈んだ」。陽水にとっては、太陽よりも星空の方が心穏やかな状態のようだ。「旅も今日で終った」。ここで言っている旅とは、最初の結婚から離婚を経て再婚するまでのことであろう。「ハイウェイ 銀のライトが並び もうすぐ君のエリアに入る 今は家路を急いでいる」。結婚に向けての最終段階であり、銀のライトとはちょっと控えめな華やかさで陽水らしい。それとも二度目だからだろうか。「愛を装備した車が 長い道を縮める」。誰彼にでも叫びたいくらい心踊っているようだが、それにしても「愛を装備した車」とはどんな車であろうか。
「よろしく 深く神秘な夜空 風はいつもと違っている」。夜空までが神秘に映り、風さえもいつもとは違って吹いているようだ。「息づく風に つつまれる今」とか、「二人の子供に名前が要る」とは、生まれてくる長男の准介さんのことである。とにかく全てのものが輝いて見えていて幸せに充ちあふれていると言いたいのだろう。こんな陽水は、最初にして最後ではないだろうか。正に幸せの絶頂期なのである。「絹の夜をすべる様に たかなる胸が 唄い出す時 夜を越えて 僕は帰る すべての事が あざやかな今」。陽水の素直な心境そのものである。