今日は「自然に飾られて」について考えてみたい。1990/10アルバム「ハンサムボーイ」に収録されている。目の前の少女がやがて大人の女性に成長していくであろう姿を想像しながら、同時にこんな風になってほしいという自身の願望が込められている。長女の衣布サラサさんが6才の頃である。少女が大人の女性に成長していく過程については、後の1993/7「Make-up Shadow」でも語られている。やってはいけないと思いつつ母親の寝室の鏡台から口紅とアイシャドウを持ち出し真夜中に恥じらいを抱いて試すことで大人の女性への扉を開いて行くと表現されている。誘惑が罪悪感を凌駕しているのだろう。
しかしこの頃では、まだそんな具体的な行為が描かれていない。「誘われて Woman 息づく風に 素肌に触れるめまいに」。そよ風がまるで息づいているかのように少女の周りを流れているようだ。そしてそんな光景を感じてはっとしていると。「夜空の星に 見とれて Baby 今から恋のストーリー 夢のような バルコニー 緑の風 に応えて」。またバルコニーから夜空の星を見上げながらこれからの恋の行方に見とれているのだろうと。「言わないでロマンス 言葉は Maybe 流れる歌にまかせて」。ロマンスは言葉で伝えるものではなく、何気なく出会って生まれるものであってほしいと。
「大人の服に 着がえて Lady ドアから外がステージ」。出かける時は大人の服に着がえてドアから一歩出たら、ステージのつもりで颯爽と歩いてほしいと。「空は Moon Light 6月のささやく声 に気づいて」。特に6月はそうすることに相応しい季節だから。「微笑んだまま 恋人のそばで 自然に飾られて」。父親として、こんな大人の女性になってほしいという願いは表現できたにしても、少女が夢見ていることまでは想像できないでいるのではないだろうか。それは「息づく風」、「緑の風」、「そよ風」とさまざまな風で表現しようとしているところに見られていて、また同時に「自然に飾られて」というタイトルも、娘の将来の具体的な姿が想像できないでいると聞こえるのであるが。