今日は「誘惑」について書いてみたい。1983/12シングル盤としてリリースされている。「誘惑」というタイトルから、何故か最近話題になっている卓球の愛さんの親権で泥沼化しているニュースが連想されたわけである。幼少期に「泣き虫・愛ちゃん」と呼ばれた女の子が、結婚、離婚、再婚を経て自身では気づいていない自身が持っている女性としての魅力によって大人の女性に変わって行ったわけである。
この曲では、女の子が少年からの誘いを受けながら次第に大人の女性に変わっていく様子が描かれている。また「いつのまにか少女は」から10年が経過し、女性に対する陽水が抱いている印象の変化が感じられる。結婚や離婚、また子供の誕生を経験したことで、「ジェラシー」で表現されていた女性が子供を産んで育てるという太古の昔から脈々と続いてきた特権に対する畏敬の念のようなものを陽水は感じていて、女性に対する印象が変化してきたのであろう。後の「新しいラプソディー」では、2才の娘に対して輝かしい未来が待ち受けていてほしいという願いが込められていたが、そんな輝かしいことばかりではないよという陽水らしさが見受けられる。
「うわのそらで夢を見てる少女 あぶないね」。少女から大人の女性に成長していく過渡期は、どこか危なっかしい状態であると。「踊りながら声をかけるBoy やさしくね」。そんな少女の魅力に少年は惹かれて声をかけてしまうが、はかないものに接するようにやさしさが大事であると。「目かくししてても うつろな瞳はすぐわかる」。少女の危なっかしい状態は、全身から感じられるものなんだと。「Ahー また裸足でついてゆくね Ahーまるはだかで消えてゆくね」。少年からやさしく誘われれば、なんの戸惑いもなくついていくようだと。
「うわのそらがにあうOffice Lady」、「書類のコピーの 最後のページにKiss マーク ランチのあいだに 今夜の予定が出き上がる 終りの合図のチャイムが デイトのGo サイン」。Office Ladyになっても、仕事には興味がなく、男性とのデートのことで頭がいっぱいであると。「うさぎよりは酒を運ぶバニー」、「今夜の笑顔は特別ステキだ かたちだけ 約束するのに時間がないのさ 早くして 迷っているのに答は出ている ひとつだけ」。バニーガールになっても、とびっきりの笑顔を振りまいて男性からの誘いを期待しているのであろうと。ただし、そんな素振りは全く見せないが。また1983/12は、長女の依布サラサさんが生まれた時でもあり、娘の誕生をきっかけに遠い将来を想像しているのではないだろうか。