今日は「Just Fit」について書いてみたい。1982/12リリースのジュリーのアルバム「MIS CAST」に収録されている。このアルバムは全曲、陽水が作詞/作曲していて、ほとんどの曲がジュリーをイメージして作られているようだが、「Just Fit」は自身のことを書いているのではないだろうか。また後の1986/8リリースのアルバム「クラムチャウダー」にも収録されていることからも、陽水にとって思い入れのある曲であることがわかる。これまで何度か触れてきたが、1980年代は例えば山口百恵さんや中森明菜さんへ楽曲提供しており、これらの女性シンガーとの関係が「Just Fit」だと強調しているのではないだろうか。特に「スターダスト パラダイス ゆく先がわからない」という歌詞に現れている。また印象深いのは、陽水と安全地帯が「夜のヒットスタジオ」でこの曲を歌っているが、歌い終わった時に、明菜さんが立ち上がって笑いながら拍手をしているシーンである。感性豊かな明菜さんのことだから、自分との関係を歌っていると気づいていたんだと思う。
「ステーションワゴンに 俺は乗り込んで 夜の荒野を かけているところ」。女性シンガーへの楽曲提供は、「My House」でも語っていたように、どうやって取り組んでいいやら先が見えない四苦八苦した状態であると。「バックミラーは あとを見るかがみ ヘッドライトは 前を知るあかり」。既に提供した楽曲の良し悪しの検証を行いつつ、新しいことに挑戦していかなければならないと思っているようだ。陽水の真面目な性格を考えると、そんなふうに解釈できるのではないだろうか。
「チークダンス メロディー カーラジオがからかう メイン道路のはずれで 女がトップモードの ドレスでタップダンス踊ってた」。チークダンスのようなスローなメロディーが似合いそうだと思っていたら、タップダンスがぴったりするような想定外のシンガーだったこともあったと。「いろんな夜を 転がりつづけて 知らないうちに 知りすぎたけれど」や「Midnight Sexy 急カーブにUターン」も陽水のイメージしたことと、実際に楽曲を提供した際のギャップを表現しているようだ。女性シンガーとの精力的なコラボレーションは、1977/4石川セリさんの「ダンスはうまく踊れない」を皮切りに1980年代中頃まで続いていたのではないだろうか。