今日は「あどけない君のしぐさ」である。1972/12リリースのアルバム陽水Ⅱセンチメンタルに収録されている。洗濯をしている君とは誰のことなのだろう。まずタイトルから受ける印象であるが、普段は見せないような仕種を垣間見たということではないだろうか。同時に日頃の関係性が薄いような感じである。
陽水が再デビューした頃の楽曲を見ると、両親や姉妹についての曲が見受けられる。「人生が二度あれば」では両親のこと、「白いカーネーション」では母のこと、「夏まつり」では妹の章子さんのことを歌っている。当初この曲の君とは、彼女のことなんだろうと思っていたが、どうもそうではなく、この君とは姉の京子さんのことではないだろうか。京子さんは8才年上なので、陽水から見たら随分年上で、あまり一緒に遊ぶことがなかったのではないだろうか。そんなふうに思っていたお姉さんが、ふと見せた無邪気なしぐさが印象に残っていたのであろう。お姉さんは洗濯は自分でしていて、ついでに陽水のシャツやセーターも一緒に洗濯してくれたことを思い出しているのではないだろうか。
「せんたくは君で 見守るのは僕」。「お姉さんが一緒に洗ってあげるわよ」とでも言って陽水のシャツを洗っているほほえましい姿が見えてくるようだ。陽水はうれしそうに、そして自分では出来そうもないので「そんなできるんだ」とでも思いながらお姉さんを見ている。「シャツの色が 水にとけて 君はいつも安物買い」。シャツはお姉さんが買ってくれたもののようだ。弟にシャツを買ってあげるような、面倒見の良い優しいお姉さんである。ただ、お姉さんのお小遣いもそんなに多いわけでもないので、安物のシャツだったようだ。
「僕のセーターは とても大きくて 君はそれを しぼれないと 僕の腕を横目で見る」。シャツの次にセーターも洗ってくれているようだ。陽水に向って「男の子なんだから力あるでしょ」といたずらっぽく言って、洗ったセーターをしぼってほしいという仕草をしている。「君のエプロンは 赤い花模様 シャボン玉が ひとつふたつ 晴れた空にこぼれ落る」。お姉さんのエプロンは赤い花模様であり、洗濯の後に二人してシャボン玉を飛ばして遊んだことが楽しかった思い出として心に残っているのだろう。姉弟の何気ない日常ではあるが陽水にとっては忘れられない記憶である。