今日は「愛されてばかりいると」である。1982/12リリースのアルバム「LION&PELICAN」に収録されている。この曲には、シャネルのミニスカートでも身につけ、ハイヒールで夜の都会を颯爽と通り過ぎてゆくような、思わず振り向きたくなるような女性が描かれているが、この女性はいったい誰であろうか。
「クレイジーラブ」でも書いたが、1980年代は山口百恵さんや中森明菜さんに代表される多くの女性シンガーに楽曲を提供しているので、そんな女性シンガーをイメージしているというのが第一である。また「とまどうペリカン」では、ライオンに感じた妻のセリさんではあったが、恋愛当時を回想しているのではないかというのが第二である。ちょっと待ってくれ。セリさんもシンガーであることに、恥ずかしながら、気がついた次第であるが、石川セリさんについては、歌手であること以外は何も知らないので、後で少し調べてみたい。
「夜の中をめだちすぎる赤いドレス 街の中でひかりすぎる銀色のピアス  Baby あなたの指先は スピーディーな黒猫のよう」。夜の街で、きらびやかな衣装で、指をしなやかに動かしながら何かを演じているようだ。「男達と出会うごとに指輪をかえ ささやくたび ふちどられる 唇のルージュ」。一晩に何回かステージに立ち、そのたびごとに指輪まで替えているようだ。また、何かをささやいてもいると言っている。このような表現から私が唯一イメージできるのが、夜のショーパブあたりで歌っているジャズシンガーであるが、この辺の経験が全くないので、うまく表現できないのがもどかしい。「愛されてばかりいると 星になるよ ゆきすぎてばかりいると空にゆくよ」。いろいろな男性から愛されることを続けていると、いずれ誰からも愛されなくなるということか。「笑いながら 踊りながら 転びながら 口の中へ 胸の中へ そそぎ込むワイン 」。ステージ全体を表現しているようだ。トークやダンスもあり、ワインを飲みながら演じているということか。このあたりは、自身のコンサートとは、かなり違っていて「クレイジーなときめき」と表現している。
「いつも夜はパラダイス 喜びだけくり返す 恋のゲームに誘われたままでいるのさ」。そんなステージを繰返してもいいのかいと。「夜が終わり ひとりきりでとり残され」。全ステージが終わった後は、一人取り残されていて、何か満足感より虚しさを感じているようだ。石川セリさんについて「ジェラシー」では、「ワンピースを 重ね着する君の心は 不思議な 世界をさまよい歩いていたんだ」と表現されていて、子育てに追われている母親としてのセリさんと女としてのセリさんの二役と書いたが、更にシンガーとしてのセリさんが全く別人のように別の曲で表現されているのが興味深い。あらためて石川セリさんについて調べてみて、陽水が石川セリさんに作詩作曲した「ダンスはうまく踊れない」の動画を見ると、ステップを踏みながら、ささやくように歌う様子は、この曲で語られている女性そのものであることがわかる。「ダンスはうまく踊れない」が1977/4にリリースされているが、翌年結婚し、同年に長男が生れていることから、陽水はセリさんに夢中だったことがわかる。