今日は、「新しいラプソディー」について考えてみたい。1986/5シングル盤としてリリースされた曲である。
最初に私事だが、この曲には忘れられない恥ずかしい思い出がある。30年以上も昔の事なのだが、30才で結婚して、結婚式を両家の実家のある函館で行うことになり、関東方面から親しい友人だけを呼ぶことになって、その内の吉田君という友人に、カラオケでこの唄を歌ってくれと頼んだわけである。たまたま衣裳替えで、彼のカラオケは見ていなかったのであるが、後で彼からカラオケにこの曲が入ってなかったとのこと。慣れない曲を何回も練習して、千葉から函館まで来てもらったことを考えると本当に申し訳なく、この年になっても忘れられない恥ずかしい(なぜか思い出したので、北海道では:こっぱずかしい)思い出として残っている。
なぜこの曲を選んだのか、記憶が曖昧となっているが、輝かしい未来が待ち受けるような第一印象と、「I love you」と何度もリピートしているところが、結婚式にふさわしいと思っての選曲だったのであろう。あらためて何度か聞いてみて、いったい誰に対して「I love you」と言っているのだろうという疑問である。 外国人が言っているのは聞いたことがあるが、日本人には全く不似合いな言葉である。陽水37才で同様の感じがしたはずだが、照れることもなく言える相手とはいったい誰だろう。
そこで少し調べてみると、石川セリさんとの間に、長女の依布サラサさんが1983/12に生まれていることが分かった。サラサさん2才の時である。長男の准介さんが生まれる5年も前に、「子供への唄」をつくっていて、とても子供好きなのが伺えるのであるが、特に女の子は可愛いかったのではないだろうか。2才のサラサさんに対してだったら「I love you」と言えるのではないだろうか。
「街が 未来へ向け走る 星が 夜空からはじける なつかしいメロディー あざやかなハーモニー 喜びのシンフォニー to me」。2才の娘を前にして、輝かしい未来が待ち受けていてほしいという願いのこもった歌詞であり、陽水にしては珍しいことであるが、それが実現しそうな浮き立つようなメロディーである。最後の「to me」は、「to you」としたかったのではないだろうか。さすがに照れ臭くて出来なかったのだろう。「夢を はてしのない夢を 夜に まぶしい程 夢を 散りばめてジュエリィー 星屑のファンタジー 新しいラプソディー to me」。まぶしいほどに輝く夢が待ち受けていて、「ジュエリィーやファンタジー」という言葉からは、女の子に対する思いが連想できるのではないだろうか。
最後に再度「新しいラプソディー to me」の意味合いについて考えてみたい。前文で「to me」が本心ではないと書いたが、もし本心だとすると、陽水はサラサさんから大きな影響を受け、歌手としてのスタイルというか取組姿勢のようなものも、今後変わっていくような予感を感じているのではないだろうか。そんな予感が実現した結果が、1990/9リリースの「少年時代」だとしたら、非常に興味深いのであるが。話は飛ぶが、ジョン・レノンの暗殺事件に関連して、ラジオ番組で、陽水は「回りからの影響を受けやすく、涙もろい」と答えているが、自分の娘から大きな影響を受けているわけである。