今日は「旅から旅」について再度考えてみたい。1974/10アルバム「二色の独楽」に収録されている。
ここに描かれている「旅から旅  夜から夜 闇から闇へと行く人」は2年前に書いた時と同じように陽水自身の目指すべき人物なのではないだろうか。しかしその姿である「黒いマント 山高帽 ステッキ片手のあの人」とは、チャップリンというよりは、もっと身近で同業者であるピンキーとキラーズではないかと思えてきたのである。そこでちょっと調べてみると、ピンキーとキラーズは山高帽とステッキというスタイルで陽水とほぼ同じ1968年にデビューし「恋の季節」は日本初のシングルでのダブルミリオンを達成しているので、デビュー当時の陽水にとっては、とても気になる存在だったのではないだろうか。改めて私の子供の頃に見たピンキーの歌っている姿は、今でも鮮明に思い出されるほど斬新なものであり陽水も同じ印象を持っていたのかもしれない。

また気になる同業者という点では、「氷の世界」のリンゴ売りとは美空ひばりさんの「リンゴ追分」のことではないかと以前書いたが、ひばりさんは駆け出しの陽水にとっては雲の上の人であり、乗り越えようと意識する対象であるのに対して、ピンキーとキラーズは、歌い方やスタイルという点で興味があったのではないだろうか。

「旅から旅  夜から夜 闇から闇へと行く人は誰ですか  黒いマント 山高帽 ステッキ片手のあの人は誰ですか」。今後の音楽に対する取組姿勢のようなことを再確認しているのではないだろうか。俳優の豊川悦司さんが陽水に対する印象として語っている魔の旅人というか闇の旅人というイメージで、そしてピンキーとキラーズのスタイルを意識して。

「あの人は 僕らの味方です 恐がることはない あの人は やさしいおじさんで 恐がることはない つめたく見えるけど 恐くはない」。陽水としては、当時の世間が抱いていた自分に対する印象、それは取りも直さず自分として目指していたものではあるが、実際はそんなことはないよと言いたいようだ。「春から夏 秋から冬 一年中です あの人は来るのです」。今後は休むことなく活動を続けて行くつもりでいると。

「海を渡り 山を越えて 誰かが困っている時に 来るのです」。自分の歌が悩んだり困っている人を助けることができればとも思っていたようだ。「あの人にお手紙出せません 手紙を書いてみても あの人に届かない 届きはしない」。ここに描かれている人物は実在の人物ではなくやっぱり自身の目指すべき人物のようだ。「氷の世界」により富と名声を手に入れた訳だが、同時に幼少期の想い出やこれまでの体験をベースにした曲づくりは、ほぼやりきったと感じていて今後の進むべき方向を模索していたのではないだろうか。