『関心領域』を観た
























若干ネタバレあります

























アウシュビッツ収容所の隣に住む、所長ルドルフ・ヘスとその家族。


ヘスも家族や友人から見れば決して悪魔ではなかった。夜、子どもに物語を読み聴かせ、引っ越したくないと怒る妻には困惑しつつも単身赴任を受け入れる。

優しい父で良き夫。


妻はせっせと家を整え、子どもたちはのびのび遊ぶ。


平和で理想的とも言える家族。


だからこそ尚更恐ろしい。


隣の収容所で何が行われているか、手にした毛皮や口紅や宝石の持ち主がどうなっているか、勿論知っているのに。

彼らの 関心領域 ではないのだ。




何の説明もなく、淡々と物語は進む。声高に何かを叫ぶこともない。

ただ、彼ら家族がなに食わぬ顔で暮らす日常の中で、耳をすませば聞こえてくる"音"と、バックに映りこむ"背景"が、映画を観る者にすべてを語りかけてくる。巧みな演出だ。






ところでヘスの妻の母親が、以前ユダヤ人の富豪の家に働きに行っていたと分かるシーンがある。母親は、今では裕福な暮らしをするようになった娘の成功を祝福する。あの蛮行の影にあった、屈折した思いを感じた。