フェリーニの『道』を初めて見たのはまだほんの幼い頃だった。
昼間、テレビで放映していたのだ。
父が観ていたので自分も一緒になって見た。
女の人の笑っているような泣いているような、なんとも言えない顔。
美しくも、もの悲しいテーマ曲。
当時の自分がどこまで筋を理解していたかは分からないが、とにかく悲しくて泣いたことは覚えてる。
父が『この映画は名作なんだよ』って話したことも。
可哀想な女の人を演じた女優さんが、ジュリエッタ・マシーナだと知ったのはずっと後のこと。
『ジンジャーとフレッド』で再び会った彼女は美しかった。
大人になってから観返すと、ラストシーンのザンパノの悲哀も分かる。
あんな悲しい生き方しか出来なかったんだな。
リチャード・ベースハート演じる芸人がジェルソミーナに話して聞かせた言葉。
道端の石ころだって何かの役にたってる。
自分も何かの役にたててるのかな。
だったらよいな。
若い頃は映画好きだったらしい父。
家には古い映画のレコードがたくさんあった。
晩年はたまにテレビで寅さんを観るくらいだったけれど。
自分が映画が好きなのは、そんな理由もあるのかもしれないな。