「クマラスワミ報告書」に対する日本政府の反論 | sooのブログ

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「クマラスワミ報告書」に対する日本政府の反論文書の要旨
                    2014.4.1

 女性に対する暴力に関する特別報告書(クマラスワミ女史)提出に
かかる報告書付属文書1に対する日本政府の見解。

 第1章 本文書の要点。

1.「女性に対する暴力」問題へのわが国の取り組み。(略)

2.特別報告書者は中立的客観的な調査を行い、十分な根拠に基づく事実関係を記し、法的見解を示す場合も国際法を踏まえた見解を示すべきであることが当然である。

3.付属文書1は極めて問題が多い。
 日本政府は国連人権委がこの文書にはっきりとした否定的な見解を示し、わが国の取り組みを正当に評価するよう強く希望する。

 (1)報告者のマンデートは「女性に関する暴力、その原因および結果」に関し報告を行うことである。

 現在の国際社会においては旧ユーゴ、ルワンダの問題等、未だ有効な対策が講じられていない女性に対する暴力という深刻な問題が進行中だ。 にもかかわらず、50年以上前の出来事であって、かつ、日本政府が関連する条約等に従って誠実に対応してきている「従軍慰安婦」問題を、あたかも現代における女性に対する暴力に関する最重要課題であるがごとく最初の提出文書において取り上げており、極めて不当である。

 (2)調査方法および内容上の問題点。

 極めて限定された資料に依拠して書かれているといわざるをえない。 限られた情報を、すべて一面的に一般化するという誤りを犯している。
 人権委に提出されるものとして、明らかに不適切である。

 (3)法的議論の問題点。

 誤った国際法の解釈に基づく主張は今日の国際社会にとり、到底受け入れられるものではない。 特別報告者の議論は法的色彩を帯びているが、実際はおよそ法的には成り立たない恣意的(勝手気ままな想い付き)な解釈に基づく政治的主張である。

4.いわゆる従軍慰安婦に関するわが国の取り組み。(略)

5.結論。(略)

6.本反論文書の構成。(略)


 第2章 日本の取り組み。(略)

 第3章 事実面に関する反論。

1.付属文書がその立論の前提としている事実に関する記述は、信頼するに足りないものである。

2.特別報告者の事実調査に対する姿勢は甚だ不誠実である。

 特別報告者は、旧日本軍の慰安所に関する歴史的経緯や、いわゆる従軍慰安婦の募集、慰安所における生活等について記述しているが、ほぼ全面的に日本政府に批判的な立場のG.Hicks氏の著書から、特別報告者の結論を導くのに都合の良い部分のみを抜粋して引用しているにすぎない。
 一般刊行物に依拠する場合、十分な裏付け調査を行わなければならないことは職責上当然のことだが、検証が行われた形跡がない。 その上主観的な誇張を加えている。 無責任かつ予断に満ちた付属文書は調査と呼ぶに値しない。

3.付属文書は本来依拠すべきでない資料を無批判に採用している点においても不当である。

 従軍慰安婦募集のため slave raid (この場合、“強制連行”と訳しておきます)を行ったとする吉田清治氏の著書を引用している。 しかし、同人の告白する事実については、これを実証的に否定する研究もあるなど、歴史研究者の間でもその信憑性については疑問が呈されている。 軽率のそしりを免れない。

 北朝鮮在住の女性の「証言」は、特別報告者が直接聴取していない「伝聞証言」である。
 特別報告者自ら問いただして確認するなどの努力もなしに、いかに供述の真実性を確認することができたのか、全く不明である。

4.文章の記述は一面的、かつ misleading (不明朗)である。

 いわゆる従軍慰安婦の実態は地域によっても千差万別であるとともに、歴史的に見てもかなりの変遷がある。
 特別報告者は、極めて限定された資料と、若干の「証言」に安易に依拠しつつ、それらを一般化し、あたかも付属文書に記述されていることが、すべての場合に真実であるかのような誤った印象を与えるものになっている。 付属文書のごとき偏見に基づく一般化は歴史の歪曲に等しい。

5.特別報告者は、日本政府の調査結果に十分な注意を払うべきであった。

6.結論。

 付属文書の事実関係は信頼するに足りないものであり、これを前提とした特別報告者の立論を、日本政府として受け入れる余地はない。
 特別報告者がこのように無責任かつ不適当な付属文書を人権委に提出したことを遺憾に思うとともに、人権委の取り扱い方によっては、特別報告者制度一般、ひいては人権委そのものに対する国際社会の信頼を損なう結果となることを深く憂慮する。


 第4章 法律面に関する反論。

Ⅰ. 付属文書1にかかる国際情報の基本的論点。

1.国際法の法源及びその適用。

 特別報告者の主張は法律的な論理が欠如した主観的見解の表明であると言わざるをえない。 例えば、1929年の捕虜に関するジュネーヴ条約に関する主張の如く、わが国が当事国ではない条約を論拠として条約違反を主張したり、1904年の「醜業ヲ行ハシムル為ノ婦女賣買取締ニ関スル國際協定等」にかかる主張の如く、条約の規定内容を何ら点検することなく短絡的にすべて「従軍慰安婦」に結びつけわが国の条約違反を主張している。

2.時際法の理論。

 歴史の一時点における一定の行為ないし事実について法的な評価を行う場合には、その時点において有効な法に基づいて評価する必要がある。 現行法規の遡及的(遡って)な適用は、当事国間の合意なき限りは認められない。 人権侵害を受けた被害者又はその遺族による加害国家への補償請求を可能とする法の遡及適用を認める議論は、およそ過去の戦争により人権侵害を受けた被害者又はその遺族はすべて加害国家に補償請求を行うことが可能であるとの結論を招くことになるが、世界史における数々の戦争被害者の遺族等が、今日加害国家に補償請求権を行使することができるとすることが、現在の国際関係を根本的に混乱させるものであることは論をまたないのであり、また、かかる事態を招くような規範が国際法として確立していることにつき、国際社会の多数の国が同意ないし許容していると考えることには根本的に無理がある。


Ⅱ. 法的論点に対する具体的コメント。

1.定義について。
 「従軍慰安婦」の制度を「奴隷制度」と定義することは法的観点から極めて不適当。

2.日本国政府の立場(法的責任)について、サンフランシスコ平和条約、日韓請求権・経済協力協定等においてはほかに未償請求権があっても追求しないという「完償条項」があるところ、サンフランシスコ平和条約等の交渉過程において「従軍慰安婦」問題が具体的に議論されていないとしても、わが国としては、条約等の定めるところを誠実に履行してきており、先の大戦にかかる一切の賠償、財産請求権の問題は「従軍慰安婦」の損害の問題を含めてサンフランシスコ平和条約等の当事国との間では法的に解決済みである。 関係国政府も同様の立場であると承知しており、現に特別報告者の報告においても韓国政府が同様の立場である旨指摘されている。 賠償を規律する法規は当該2国間で効力を有する国際法の法規であって、不法行為を行った国と損害を受けた個人との関係を規律する法ではない。
の結論を招くことになるが、世界史における数々の戦争被害者の遺族等が、今日加害国家に補償請求権を行使することができるとすることが、現在の国際関係を根本的に混乱させるものであることは論をまたないのであり、また、かかる事態を招くような規範が国際法として確立していることにつき、国際社会の多数の国が同意ないし許容していると
根本的に無理がある。


 第5章 勧告に対する日本政府の見解。

 特別報告者が展開しているような法律論を受け入れる余地は全くない。
 政府として元慰安婦の方々に対して個人補償を行うことは考えておらず、特別行政裁判所を設立することも考えていない。