次にストレスを体に影響させないようにする呼吸法をご紹介しよう。







名を「丹田呼吸法」という。






みなさんは中村天風という人物を聞いたことがあるだろうか?




宇野千代(作家)

東郷平八郎(連合艦隊司令長官)

原敬(第19代内閣総理大臣)

松下幸之助(松下電器創業者)

藤平光一 (合気道師範)

稲盛和夫(京セラ創業者)





上記の壮々たる面々が弟子入りし、教えを乞うた昭和の偉人である。






中村天風はこの呼吸法を「天風式クンバカハ」と名付け、


ストレスを神経に影響させない呼吸法として教えの中核に取り入れた。



その方法をお教えしよう。









■ ■■■■  実践  ■■■■■■


【丹田呼吸(天風式クンバカハ)】





・胸を膨らませながら大きく息を吸い込む。


・次におしりの穴を引き締める。


・鼻から息を吐きながら下腹部に力を込めて

 「ウーム」と息を吐く。



・しばらく下腹に力を込めて息を止める。


・下腹部が充実してきたらフーっと息を吐いていく。


・これを繰り返す。










簡単に聞こえるが効果は高い。












■ ■■■■  解説  ■■■■■■


なぜこの呼吸法がストレスが神経に影響するのを防ぐのか解説しよう。



自律神経の中枢は腹部の太陽神経叢(ソーラー・プレクサス)にある。


この呼吸法によって生ずる腹圧はこの太陽神経叢に刺激を与え、


自律神経が常に活発に働くよう促す。







ふつう精神的ショックを受けた時、交感神経の働きによって、

アドレナリンなどの強い興奮剤が過剰分泌される。




これに対し丹田呼吸等を行うと自動的に緊張・興奮を緩和するよう、

副腎の副交感神経が働いて、神経の末端から興奮抑制剤である

アセチルコリンの過剰分泌が起こされる。








この作用によって血管は拡張し、血圧も下がり、

心身の興奮はおさまってリラックスするのである。












この場合呼吸と横隔膜が非常に重要な働きをするのである。


呼吸は常に横隔膜の働き(一昼夜におよそ2万4000回)と結びついているのである.





この横隔膜の働きを旧ソ連のザルマノフはポンプに喩えている。





肝臓、脾臓、腸を圧縮し、門脈循環および腹部の血液循環を

リズミカルに行う横隔膜は、生体の血管とリンパ管の働きを盛んにし、

静脈を空にし、血液を他の臓器へ送り込む。







そこでザルマノフは横隔膜を第二の心臓とみるのである。








横隔膜が1分間に動く回数は心臓の4分の1しかないが、

その血液を圧縮する力は、心臓の収縮の力よりも

はるかに強力である事に彼は気付いたのである。





すなわちこのポンプの方が、ずっと表面積も大きく、

血液を押し出す力が強いのである。







そこで丹田呼吸法はこの働きを極度に活用する。






呼吸によって腹部の丹田に力が入ると、横隔膜は腹腔内に下がり、

腹圧が出来る。



この腹圧によって横隔膜は、ザルマノフのいう静脈ポンプとなり、

肝臓と脾臓との中にある血液を、強い力で心臓の方に送り出す。

全身の血液循環が活発になるという訳である。







その結果、胃腸の働きが活発になる同時に、全身の内分泌器官の働きも強化される。



したがって新陳代謝の機能が高められ、生体はイキイキとしてくる。





血行の働きが強化されたことにより、脳にも新鮮な血液がつねに循環するようになり、頭脳も明敏になる。







また、腹圧によって腹力が出来ると、横隔膜が腹腔に下がるので、胸腔が拡大して、心臓が安定するようになる。





以下のような生理状態が継続される事によって、心身興奮の抑制剤であるアセチルコリンがしだいに多量に分泌されるようになる。





それゆえ強度の交感神経型の人間も副交感神経型の気質を持つ人間に変身して行くのである。







こんな簡単な方法で、多大な効果が得られる魔法の呼吸法なのです。





やってみる気になりましたか?(笑)












次回は副交感神経を優位にして、脳を右脳モードにするための呼吸法です。