のび太植物人間編
第5章 「友達」だということ
「今夜が山場ですね。手術を行わなければ、命が危ないです。」
 先生がママに言った。ママはその場に崩れ倒れた。その時である。バタンッ!ドアが勢い良く開くとともにドラえもんが、病室に飛び込んできた。
「のび太くん!」
「ドラえもん。こんな時にどこ行ってたんだよ!」「ごめん。のび太くんの手術費を作る為に、ポケットの中身を全部売ってきたんだ。」
「え、本当か?これでのび太は手術できるのか?」
「ママ。このお金でのび太くんを助けてあげようよ。」
「ドラちゃん・・・ありがとう・・・。」
「先生、おねがいします。」
 迷ってる時間はない。パパは先生に手術をお願いした。
「よし、緊急手術を行う。大至急手術室へ運んで!」
病院内に緊迫した空気が一気に張りつめた。手術室は1階のB棟だ。みんなも、意識のないのび太をのせたベットの後を追った。
「全力をつくします。」
  ドアが閉められると、手術中のランプが点灯した。3時間位たっただろうか。ママとパパは親戚に連絡をとり、近い所に住む親戚はもうすでに駆けつけていた。
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ。」みんなが驚いた。ジァイアンが突如大声を張り上げたのだ。近くの看護婦が大声の元を探して、こっちへ来た。
「ここは病院ですよ。他の患者さんも居るんですから大声ださないで下さい。」
「うおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ。」
「静かにしてください。」
  「のび太ががんばってるっていうのに、何もしてやらないのが友達って言えるかっ!!!!」「のび太は俺様の友達だっ!いじめる事もあるが大事な大事な友達なんだっ!」
「フレ~!フレ~!の・び・太~!フレッフレッのび太!フレッフレッのび太~!」
看護婦はジァイアンの迫力に驚いた。そしてみんなもジャイアンの後に続いた。
「がんばれ~のび太~!」
「のび太さん~。絶対に負けないで~!」
「がんばれがんばれ のっびっ太!」「のび太く~ん。ファイト~」
「野比~負けるんじぁないぞ~!」
みんなの声援は館内中に響きわたった。看護婦はみんなののび太を思う気持ちに心を打たれたのか、それ以来無理にやめさせようとはしなかった。
第6章 不幸
手術中のランプが消えた。8時間におよぶ、大手術だった。
「やった~終わったぞ。のび太は助かったんだぁ。」
「やったやった~。」クラスのみんなは、抱き合って喜んだ。ドアから手術を終えた先生が出てきた。その白衣は赤く染まっている。
「先生っありがとなっ。」
ジァイアンは泣きながら言ったが、先生は笑顔を見せなかった。
「・・・・。」
 「のび太くんが直る見込みはありません。思ったより病状がひどく、命をとりとめはしましたが、それが精一杯でした。」
「え?」
「どういう事ですか?・・・・・」
「・・・・。」
「命はとりとめましたが、のび太くんはこのまま意識が戻る事はありません・・・・植物人間です。」
「そんなっ!うそだっ!」
「嘘ですよね先生!」
「我々、この病院の名医と呼ばれる医師全員で、全力を尽くしました。もうしわけございません・・・。」
バタッ
「おまえっ!」
のび太のママは気を失って、倒れてしまった。
「そんな・・・そんな・・・・のび太が・・・・のび太・・が・・・の・・・び・・・・嘘だぁぁぁぁぁ!!。」
「この間まで元気だったのび太さんが・・・嘘よ、そんなはずないわ。」
ダダダダダダッみんな手術室に駆け込もうとした。
「いけませんっ!のび太くんは手術は終わりましたが今は危険な状態ですっ。あちょっと!入ってはダメです。」
 「うるせ~!!!!!!」
最終章 さよならドラえもん~~みんな友達~~
忙しい1月が終わろうとしていた。3日間降り続いた雪もやみ、今日はお日様と輝いている。いつものように平和な1日が始まろうとしている。が燦々ただ1つ、のび太の病室を除いて・・・。
「のびちゃ~ん♪学校行かないと遅刻するわよ。それにしてもかわいい寝顔だこと♪」
ママはショックのせいでおかしくなってしまったのだろうか?毎日毎日、朝から晩まで、のび太に話しかけている。どれほど寝れない日が続いたのだろう、今ではママはガリガリにやせ細ってしまった。のび太の寝顔はまるで天使のようだ・・・・。パパも会社を辞め、毎日のび太のそばにいる。ドラえもんはあれ以来、誰とも口を聞かなくなってしまった。ちょうど小学校が終わる時間・・・。
「おばさ~ん。のび太は?」
ジャイアンを筆頭に今日もクラスのみんながお見舞いにきた。
  「あら剛くん。今日はのびちゃんまだ起きないのよぉ、しょうがない子でしょ?のびちゃ~ん、クラスのみんなが来たわよ。ほらっ起きなさい!」
「おばさん・・・起こさなくていいよ。まだ寝かせてあげてよ・・・まだ眠いんだよ、きっと・・・。」
「そお?ごめんなさいねぇ。せっかく遊びに来てくれたのに。」
 「ドラえもんっ元気だせよっ」
「のび太は死んだ訳じぁないさ。」
「そうよ、私達の友達ののび太さんはここにいるじぁない。」「・・・みん・・な・・・。」
ドラえもんが口を開いた。堰を切ったように、いままで我慢してきた涙が一気にドラえもんの目からあふれる。
「みんな・・・・僕、のび太くん大好きだから、病院で寝たきりののび太くんをどこかに連れていってあげたいんだ・・・。パパ・・・ママ・・・いいでしょ?僕はのび太くんの為に未来から来ただ・・・。」「ドラえもん・・・・・。」
「ドラちゃん・・・・・。」
そういうとドラえもんは空っぽのはずの4次元ポケットから「どこでもドア」を取り出した。ドラえもんは何かあった時の為に「どこでもドア」だけは売らずにとっておいたのである。ドラえもんは「どこでもドア」を狭い病室の中に立てると寝たきりののび太に話しかけた。 「のび太くん・・・・どこに行きたい?のび太くんの好きな所に一緒に行こう。僕達、いままでだってどこに行くにもず~っと一緒だったもんね。」
ドラえもんはそう言うと、のび太を背中におんぶした。
「どっこいしょ。 重くなったねぇ のび太くん・・・。」
   のび太を背中に背負ったドラえもんは「どこでもドア」の前に立って、もう一度のび太に聞いた。「どこに行きたい?ねぇのび太くん。」
答えが帰ってくるはずはなかった・・・。
しかし、一瞬みんなにはのび太が笑ったように見えた。幻だったのかもしれない・・・。
「わかったよ。のび太くん。 そこへ一緒に行こう・・・。」
ドラえもんには何か聞こえたのだろうか?またのび太が微笑んだ。見間違いなどではない。みんな見たのだ。「のび太くん。じぁそろそろ行こうか・・・。」
どこでもドアが、ひとりでに開いた・・・。開いたドアの向こうに素晴らしい景色が広がった・・・。綺麗なチョウチョが飛んでいた。見たこともないほど可憐で、嗅いだ事のないほどいい匂いのお花が咲いていた。まぶしい程の光でいっぱいだった。のび太が最後に行きたい所。そこは天国だった。
「さあ、行こう。」ドラえもんは動かないのび太くんを背負ってその中に入っていった。
ギィー バタンッ