空に手をのばす



青は わたしを


静かに 受けいれる





こばまず



えらばず




ただ そのまま



わたしの手は 空のなかに 差し出される



青はそれを


静かに 包み込む







ただ それだけ







わたしが 青に 両手を のばしつづけるのにも つかれて



ふたたび 地に おちても





その わたし 全体を 


しずかに ただ だまって



つつんでいる









わたしは ときどき


青に 癇癪を起す








そこにいるのなら


声を聴かせてほしいと




















空を見上げる



どこまでも 澄んだ



天のブルー






このブルーは




わたしと あなたを



繋げている







わたしと あなた と みんなを


わたしと あなたと 世界を



全部 まるごと



繋いでいる






わたしは 深い 息をつく





そのブルーを なるべくたくさん



わたしの 身体のなかに



記憶させたくて














あなたはブルーな人でした





澄んだ空のように





わたしを自由に そして 優しく 包んだ






わたしは そのここちよさに


身をゆだね


甘える


安心する




やっと 目を閉じて

眠れたような気がした











 でも あるとき



不安に駆られる





このブルーは いつまで こんな風に


ブルーでいてくれるのだろう





わたしは ブルーを 手に取りたくなる


空に 手を伸ばす


つかむ





大きく深呼吸して


できるだけブルーを取り込んで

それを なるべく 減らさないように





でも 吐く息と一緒に


すべては 流れて行ってしまい



また その青は 青に戻っていく






何かが 変わってしまったのではない









ただ 最初から そうであったのだ









青は青から生まれて


青に帰ってゆく






おそらく わたしも 彼も 誰も 彼もすべてが



青から生まれて


青に帰ってゆくだけなのだ






青は青に還る



なにひとつ 変わっていないのだ









19歳のわたしは



満開の桜に圧倒されて佇んでいた




彼の吐く息が白い霧のようになるのを観ていた


そして それよりも白く

月の光に照らされた 白銀の世界





横浜に 大雪が降った4月のことだ






地面はすべて白く輝き

そして 満開の桜が


月の光に照らされて


この世のものとは思えない 風景だった


わたしはその衝撃に

その美しさに




ただ 打たれていた







そして やはり それは奇跡だったのだった



彼とわたしの関係は




決して留めることのできないものだった





だれにも明かせず




だれとも共有できない





白い雪と満開の桜のように

あり得ない組み合わせなのだ





神様の気まぐれで



出会い


ふれあい



そして 



雪が溶け



桜は 散る








そして わたしも 彼も





帰るべき場所に 帰る







小さな奇跡の記憶だけが



心の奥底に




残る






だれにも語れないちいさな かけらのような

記憶







再現することはもう決してできない



あの日の




情景と同じように