「今日、会えるかな?」




いつも、同じ問いかけ



「うん。大丈夫」


いつも同じ答え




他の予定が、とか

時間が、とか


そんな事よりも

今断ればまた次はいつ会えるかわからない

そっちの方が耐えられないから





僕から連絡はしない


正確にはできない


着信はいつも非通知











普通に生きてきた。

仲間の前では明るい自分でいたし、

みんなと騒ぐのも好きだ。

ムードメーカーにだってなる。

それなりに恋愛もした。

でも、一目惚れは絶対にしない。

常識を外れるような事もしない。

一人でいればつまらない人間だと、思う。


ただ、真面目に生活してきた。



彼女に逢うまで・・・








最初に見た彼女は


とても綺麗だった。



容姿が、とか、スタイルが、とかそういう事ではなく


そこにいるだけで、その場の空気が浄化されていくような



そんな訳ないけど

その時の僕には、そう見えた





よく言うだろ?

息を飲んだ、時間が止まったような、って。


そんな事ありえないと思ってた。


でも、


間違いなくその瞬間の僕の時間は、止まった。




そして彼女は、泣いていた









「今日も、雨だね」


町外れの喫茶店

こんな時間だから、客はいない。

店主も奥でテレビを見ているのか、カウンターにはいない。


「そうね、いつも雨」

窓の外を眺めながら、彼女が呟く。


街灯が誰もいない道を煌々と照らしている。


雨は止まなさそうだ。



彼女と会うときは、いつも雨

周りの喧騒から、僕らを隠すように



いつか晴れた青空の下で

彼女に会える日がくるのだろうか



や・・・そんな事、望むべきではない。



誰かに知られてしまえば


終わってしまうのだ。


僕たちは



誰にも、知られちゃいけない。





彼女の左手には



僕のものではない、印がある。





左手の



薬指に







「あぁ!!もう!こんな予定じゃなかったんだよ!」


ソンジェが少し腹立たしげに言った


あたしにじゃなくて、自分に



「ヌナ!まず、僕は別れる気なんて全くないからね!」



真っ直ぐあたしの目を見て


そう言い放ったソンジェ



じゃあなんで?



聞こうとしたら



急に手を引かれた。



「ちょっとついてきて!」




そのままソンジェに手を引かれて


車に乗せられ





着いたのは・・・






「え?ここ?」




何度も来た。



ソンジェのマンション



「ほら、早く来て」




急かされて




扉の前



「ソンジェの、部屋?」




ソンジェを見上げる


意図がわからない




「扉、開けて入って」



にっこり笑ってあたしを促す



恐る恐る、扉をあけた






そこには




いつもの見慣れたソンジェの部屋





ではなく、





見たことない




目新しい家具





「え?どうしたの?今までのは?」


「いいから、こっちも見て」




驚くあたしをよそに


さらに奥へと進むソンジェ



新しいテーブル



新しいカーテン



新しい食器




そして




新しいベット




「二人で寝るには狭かったでしょ?今まで」




うん、ソンジェ寝相悪いから


今までのベットは確かに狭かった






「はい、これ。」






そう言って、そっと手渡された






「・・・鍵?」






これって







「ヌナ、一緒に住もう」









そっと抱き寄せながら














「ずっとこの準備しててさ
 どうしても驚かせたくて。
 悲しい思いさせてごめんね?」




「ヌナ?聞いてる?」







「・・・聞いてるよ」





「ヌナ。返事は?」





抱きしめてるソンジェの手に力が入る






「・・・いいに決まってるよ。。。バカ」





せっかく止まった涙が、また流れる





「ふふ、、良かった。ま、拒否権ないけどね」




最後のはきっと照れ隠し






「もう。。。本当に、悩んだんだからね!!」


「ホントごめんって!」



涙目で睨むあたしに、


ソンジェは少し愉快そうにしてる


「でも、これからは一緒だからね」


「もう泣かせないから」




優しく微笑んで



耳元で囁いた







end
「あ、あのねっ!!!」


ソンジェの言葉を遮るように

思わず声を上げた。




ソンジェの口から『別れよう』なんて、やっぱり聞きたくなかった

それなら自分から言った方がマシ。




「あ・・のね、ソンジェがそうしたいんなら、
 
 いいよ。あたしは、大丈夫だから・・・


 
 だから、あたしの事は気にしなくていいから・・・」




一気に言った


ソンジェの顔、見れない・・・



見れるわけない







「・・・え?ヌナ?何の事?」




「・・・え?」



え?


ぽかんとした声に、思わず顔をあげる。

ソンジェが怪訝な顔をしてあたしを見ている



「ヌナ、どうしたの?僕がそうしたいならって、なに?」



顔をしかめて、ソンジェが問う


「え?だって・・・大事な話って・・・別れ話じゃ」

「誰が誰と別れるの?」


え、だって・・・

そんな真剣な顔して言う大事な話って別れ話以外に思いつかない


「あ、あたしたち」


「どうして?ヌナは僕と別れたいの?」


「そんな、わけ。ない・・・」


「じゃあ何でそうなるの?」



語尾が少し強くなる。

ソンジェが少し、怒ってる



なんで?




「だっ、、て、、、一ヶ月以上もあえなくて、、、
 部屋にも、、、入れてくれな、、いし、、、」




言いながらもう、泣いてた。


だって


だって・・・




「あ、あぁ。。。それで」


ソンジェは、はぁ・・・とため息一つついて

その場にしゃがみこんだ。





そして



「ヌナァ~・・・ごめん!!」




そう言うと

ソンジェはあたしをギュッと抱きしめた。




「・・・へ?」



頭が状況についていかない。




「ヌナァ~本当ごめん!お願いだから泣かないで?
 ね?僕が悪いんだけどさ・・・
 そうじゃないんだ・・・」


申し訳なさそうに、あたしの顔を覗き込んで

頬に触れた


「本当、ごめん。会えなかったのは、ヌナを嫌いになったからじゃないよ。
 なるわけないじゃん。こんなに好きなのに」


その言葉に嬉しいのと、
じゃあ何で?って気持ちと
なんか色々混ざって


涙が止まらない


「じゃ、じゃあ、、なんで、、?」




続く

「はぁ。。。」


こんないい天気なのに
気分は重い。




先週意を決して送ったメールはその日の深夜に返って来た。

ま、メールが遅いのはいつもだけど


どうしても次の土曜は会いたいって送った。


部屋に行こうかと思ったけど、

考えうる一番最悪な状況を思うと

部屋に行く勇気はなかった。



待ち合わせはお互いの家のちょうど中間にある公園



なんて、聞けばいい?


自分から会いたいって言っておいて

なんて言えばいいか、全然頭に浮かんでこない




「あたしと別れたいの?」



そう言えばいいのに。



あたし我が儘だ。




一人でも大丈夫なんて言いながら


言いたくないと思ってる。








「ヌナ!遅れてごめん!ちょっとバタバタしちゃって・・・」


待ち合わせの時間から少し過ぎた頃

ソンジェは来た。



「ヌナ。久しぶり。最近ごめんね?なかなか会えなくて」


「ソンジェ、少し痩せた?ちゃんとご飯食べてる?」


久しぶりに会う彼は少し痩せてる気がした。


本当に忙しかっただけ?


モヤモヤがまた広がる



「ヌナ?どうしたの?元気ない?」


一瞬曇ったあたしの表情に気づいて

ソンジェは顔を覗き込んできた。




「だ、大丈夫だよ!」

久しぶりの近距離に変に緊張する。


(何今更緊張してるのよ!)



いつも通り


落ち着けあたし。




「あ、ヌナ!あのね、今日大事な話があるんだけど・・・」


「えっ?」



突然のソンジェの言葉


真剣な表情


落ち着かせた気持ちが、


またざわざわする



(本当に、別れ話になる・・・?)



この一週間ずっと考えてた。


やはり、これが現実・・・?






「あのね、ヌナ・・・


 実は・・・」





続く
『ごめん。明日、仕事の用事が入った。
来週も忙しいから、また連絡する』



また、会えない




ここ最近、同じ内容のメールしか見てない。

お互い電話はあまり得意じゃないから

そんなにしない方だけど、

それなりに連絡取り合うし

週に一回はお互いの部屋で過ごしていた。




でも、ここ一ヶ月以上


こんなメールか電話ばかり。

ソンジェの仕事は不定休だし残業も多い。

たまにこう会えない事が続く事も今まであった。


あった、けど。。

こんなに素っ気ない状態、初めて



言いようのない、漠然とした不安。




もしかして、終わりが近い・・・?




部屋に一人でいると、そんなことを考えてしまう。



元々付き合う前から、不安はあった。


年齢的な。




大好きだと言ってくれるのは、最初のうちだけなんじゃないか。


大学を出て、仕事を始めて、

2年目になれば余裕も出てくる頃。


人が多く出入りする彼の会社なら

あたしよりも若くて綺麗な女性だってたくさん見る。


埋められない年齢差を感じているのは

あたしだけ、


ではないはず




「やっぱり、、、飽きたのかな」




ずっと心の中にあった不安。

声に出してみると、なんだか急に

それが現実味を帯びて感じられ

テーブルの上の手にギュッと力がこもった。



来週、きちんとしよう


こんな状態でいるのも、辛い。



もし、そうだとしたら。。。



大丈夫、あたしは一人でも。



決心してソンジェにメールを送った。



続く



(あ、ちょっと仕返し!)


あたしは後ろからそっと腰に手を回してぴたっと
背中にくっついてみた



彼の手が、止まる



「びっくりした?」


彼の後ろ姿、好きなのよね。




「した…どしたの?急に?」

平静を装ってるけど、きっと

びっくりしてる。

可愛い!




「うん、よしとしよう!」

一人でニヤニヤしながら出来上がった料理を運ぶ。


後ろで彼はポカンとしてるに違いない(笑)







「今日はどれにしますか?」


彼コレクションのミニワイナリー

一緒にご飯の時は一本開ける



「ん~今日はこれかな」




二人そろって美味しい食事とワイン



こんな幸せな気持ちにさせてくれるのは


彼だけ。



大好き









「あ、あんまり飲み過ぎたらダメだよ!」



いい気分になって、もう一杯と


手を伸ばそうとしたあたしに


彼からストップがかかった。






「え~ダメ?なんで~?」







「飲み過ぎると、寝ちゃうでしょ?






今日は寝かせたくないから…」








end

彼は聞き上手だと思う。

つい色んな事話しちゃうし、わかってくれる。

あたしも彼にとってそうであれば、いいな。



「・・・て、一日でした。おしまい」

頭だけ動かして

彼を見上げてみる。



思ったより、近い





綺麗な肌。


笑うと少し下がる眉。


可愛い唇。






「そか、今日も一日お疲れ様」


そう言って、彼はパッとあたしはを話して立ち上がった。

「・・・え?」

ちょっと予想外の行動に、思わず疑問の声をあげた。


や、別に何を期待してたわけじゃないけどさ…!!



「ほら、着替えておいでよ~」

そんなあたしの心の内を知ってか知らずか

変わらない笑顔であたしを促す。

「あ、うん。。着替えてくる…」



(なんかあたし一人でドキドキしたみたいじゃん///)

一人恥ずかしくなっていそいそと着替えに逃げた。






部屋着に着替えて戻ってきたら
彼はキッチンにいた。

「あれ?今日はあたしが作る日だよ?」


料理は交代制。お互い忙しいからね


「うん。でも今日休みだったし。
実はもうほとんど出来てるんだよね^^」


「あ、ほんとだ」

カウンターから覗き込むと、美味しそうなパスタとサラダ。


言われてみればいい匂いするじゃん。
全然気づかなかったとか、あたし疲れてるのかしら


「なんか手伝うよ」

「いいよ、もう殆ど出来てるし!座ってて」

「・・・やだ」

ちょっと意地悪♪


「・・・恥ずかしいよ?座っててって」

「やーだ♪」



キッチンに回ってからかって遊ぶ

あんまやると拗ねるから適度にね(笑)




続く
クリーム色のふかふかしたソファー

二人で一番悩んで選んだ、お気に入りのソファー


「どうしたの?」

って、彼の方を見たら


彼はあたしの肩に頭を乗っけてきて・・・


シャンプーの香りが微かにして


ドキドキした。



「今日はね・・・」



彼は今日の一日の出来事を話し始める。



仕事柄、家を空けることも多いから、
一緒にいる時には必ずお互いの話をして
お互いの話を聞く。
一緒にいなかった時間も共有する。

こういう幸せは彼と出会ってから知った。



「で、今日はどうだった?」

一通り話し終わってから、彼は体を起こし
あたしに話しかけながら
そのまま座り直す


のかと思った。ら。



すっと腕を伸ばし、あたしの肩を寄せて



あたしはあっという間に彼の腕の中に収まっていた。



「えっ、、と、、、」



「今日はどうだった?」



後ろから聞こえる彼の声。


つまりこのままの状態でいろって事か。



いつも本当に優しくて、でも、たまにこうやって

有無を言わせないような事してくる。

こういうところ、可愛くて仕方がないの(笑)

可愛いって言ったら怒るから言わないけどね♪




一人納得して、そのまま体を彼に預けて



今日一日の報告を始めた。





続く
「ただいまぁ~」



付き合い始めて1年。



「おかえり^^」




一人の部屋じゃなくなって2ヶ月。



出迎えてくれたのは、彼。

仕事の時とは違って家ではゆったりしたものや
ゆったりした時間を過ごすのが好きみたい。


グレーのスエットに黒のタンクトップで愛犬のサランちゃんを抱えながら
玄関で出迎えてくれた。


「ただいま」


出迎えてくれる人がいる幸せを実感する。



今日は仕事がお休みだったみたい。

彼は旅行会社の優秀社員。
友達といったツアーで知り合った。







「ね、こっち来て座って!」


着替えようと思って部屋に行こうとしたら、
ソファーに座った彼に呼び止められる。


「先に着替えてくるよ」


「いいから!ここにきて^^」



自分の隣の空いてる場所をポンポンって叩いてこっちを見る。




か、可愛い・・・


なんか逆にこっちが照れる///



じっとこっちを見て待っている彼に負けて
あたしはその指定された場所へ腰を下ろした。



まぁ勝てると思ってないんだけどね(笑)



続く
「片付けてくれてありがと」


頭に声が響く

オッパはあたしの頭に顔を乗っけて
後ろから腕を回して

その手はあたしの手を握ってた



「い、、、いいから、早く着替え」

「緊張してるの?照れてるの?」

クスクスと、楽しそうなオッパの声


からかわれてる。

・・・悔しい////



でも。。。嫌いじゃない


「それともドキドキ?」



答えないあたしにさらに意地悪する

普段マイペースでのんびりで!

すぐ物失くすし、あたしが言った事聞いてないし

買い物行ってもすぐ休憩だし

趣味ちょっとおかしいし、なんかずれてるのに!!

もう!こんな時だけずるいし!!!

ずるいずるい!!




「も、もう!!!全部だよっ!!!久しぶりだから緊張だってするし!
照れるし!ドキドキするもんっ!!!
オッパのバカっ!!!」


訳分かんなくて勢いに任せて言っちゃった


そしたら、オッパ



笑うんだもん



「なんでー笑うのー。。もう!」

もう暫く機嫌直してあげないんだから。



「あはっ…ごめんごめんw
だって可愛いこと言うから^^」



「ほら、着替えてくるから。機嫌直して?
デートしにいこう?お姫様♪」


まるで、子供をあやすみたいな言い方




でも、わかってるんだ。

ちょっと優しくされたら

機嫌直しちゃうあたし


オッパはずるい


いつかオッパより余裕ぶってみせるんだから!!!




end