久しぶりにあの海に来ていた


新しい事業所はやることすべてが知らないことだらけで


覚えることは山ほどある


1から出直すと決めた以上、自分の身分も隠して働いている


知っているのは所長だけだ


今まで自分が部下にしていたことが恥ずかしくなるくらい


ここの上司は俺に親身に接してくれる





奈緒には寂しい想いをさせた


それでもついてきてくれると自惚れていた


そんな自分を変えなきゃいけない


そう思ったら


なぜかあの海に足を運んでいた









学生だったあの頃






俺には奈緒しかいなかった



いつから俺たちはすれ違ってしまったんだろう



あの頃の自分と気持ちは今も変わらない



奈緒もそう思ってくれている、そう信じていた



心では繋がっていると思ってた



自意識過剰のその態度が、奈緒から俺を遠ざけてしまったんだ









奈緒「剛典」



剛典「えっ!」





剛典「奈緒!どうしてここに!」



奈緒「急にあの頃を思い出して来たくなったの」



剛典「元気だったのか?!」



剛典「びっくりしたよ、俺も急に思い立って。こんな偶然あるかな」



奈緒「元気だよ。心配しないで」



剛典「そっか、良かった」



奈緒「剛典、カーディガン持って来てくれたの?」



剛典「あ、ああ、お兄さんに渡しといたんだ」



奈緒「何か私に話すことがあったんじゃないの?」



剛典「……そんなことは…ないさ…」



奈緒「私に会いに来たの?」



剛典「………」





剛典「あの人と逢ってたんだろ?」




剛典「良かったよ、会わなくて。会ってたら俺…」









剛典「行くなよ!!って言ってたかもしれない 」


あいつのとこなんか行くなよって…