流氷が接近してきたようだ

昨日のニュースで

網走管内の紋別の北方40キロまで来ているという

今年は早い

 

15年前まで

オホーツク海沿岸の小さな田舎町に暮らしていた

石川県で生まれ育った私は流氷というものを見たことがなかった

 

北海道の、網走よりももっと寒いところ

結婚してから初めて暮らしたオホーツクの街はびっくりすることばかりだった

 

当時は今よりもっと寒くて

冬は寒くて寒くて、毎朝天気予報で今朝の最低気温はマイナス10何度がざらだった

マイナス20°になる日もあった

 

その代わりお天気が良くて

真っ青なオホーツクブルーの空。

 

冬はゴロゴロと雷が鳴り、どんよりとした雪空の北陸で育った私には

それは不思議な感覚だった

 

私が住んでいたのは

1月下旬になると流氷がやってくる街だった

 

最初に薄氷のようなものが押し寄せてくる

海全体が薄氷に覆われて、シャーベット状になった海が

見渡す限り大きくゆっくりと波立ってうねっている、それはそれは圧巻です

この景色は地元にいないと滅多に見られる景色ではないなあ

 

それから流氷本体が風に乗ってやって来て陸と繋がり接岸する

 

水平線の彼方まで流氷で海が覆われて、その上に雪が積もり

どこまでも雪の原野が続いているように見える

 

風が強いと

これでもかと厚い氷が重なって浜辺に乗り上げる

陸に乗り上げた氷は陽の光に照らされて

海の色が染み込んだか

空の色が映ってか

ほのかに蒼い

 

ある年

厚い氷が浜辺にどんどん押し寄せて

さながら流氷山脈のようになったことがあった

 

海岸沿いの道をバスで高校に通っていた息子が

学校から帰ってくるなり、興奮し、息せき切って

「母さん、今日、流氷がものすごかったんだよ。すごい綺麗だったさ」と

小さな子供のように話してくれた

 

次の日の朝刊に載ったものだから

私もそのスポットに見に行ったら

他管内ナンバーの車がいっぱい。

こんな凄い流氷はそうそう見られるものではないからね

 

みんなに見てほしかった

 

海が流氷でびっしり覆われると

オホーツクの街は一段と寒さが厳しくなるけど

不思議と街なかに風が吹かないんです

 

冬の夜は風の音の代わりに

流氷が軋む音が聞こえたという

 

近年は温暖化のせいか

海一面が厚い流氷に覆われて、1ヶ月2ヶ月の間、氷が動かないってことがなくなった

 

朝のうち、あーー今日は流氷でびっしりだって思ってても

風が吹いて昼過ぎには氷が全部沖に行ってしまうなんてこともしゅちゅう

 

運が良くなければ

砕氷船でガリガリと氷を割っていく体験ができなくなっていくかもしれない

 

 

映画館もないし

本屋もないし、パン屋もないし

何もない街だったけど

どこにもない素晴らしい自然があった