Amazonで先日買ったスーツが届いた |  My Place

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 書いて作って育てる日常の備忘録

Amazonで先日買ったスーツが届いた

茶色とカーキを足して二で割ったような色

黒もブルーも洗えるポリエステルが一着ずつあるけれど

初夏に黒スーツは着ていても見た目も暑苦しいし

ブルーのパンツスーツは運転手の様だと揶揄されたし

一緒に面接ごっこをして訓練生ごっこをしたあの人たち

修了から早一週間が経った今はどうしているのだろう

四月始まりのスケジュール帳に面接予定を散りばめて

日常と言う名の広い世界で孤軍奮闘しているだろうか

内定した子や起業準備の子や春から再び学生になる子

離婚するかも入院するかも実家に帰るかもの子もいたし

何事も執着しなければ別れや変化など辛くないからと

あの中にいて現状維持を忘れまいとしていたのは私

 

真冬の名古屋とは言え体重さえも現状維持してしまった

しかしながらAmazonで先日新しいスーツを選んだ

誰に何を言われようと平気なはずだったのに

お古な自分にお古なスーツが似合いすぎていたという理由で

全てが終わるまでマウントを取るのを待っていた

私に大勢で集まって酒を飲んで愚痴を言う習慣はなく

あの人の二枚舌やこの人の陰口やその他大勢の侮蔑にも

関心を保てるほど時間や健康に余裕もないのが常なので

新しいスーツと新しい靴と新書にバイト代を費やし

期間限定的お友だち登録からいくつかの名前を削除し

日常に戻った彼女たちは再び見知らぬ人になった

私たちはたぶん少しだけ長く短い夢を見ていたのだろう

その夢から覚めないように私はいい人を演じていたのだろう

 

迷いながら計画する間が旅は一番楽しいはずだ

一日が経ち二日が経ち一週間そして一か月

規則正しく過ぎる残り時間もあと僅かとなると

心の中でさようならのデモレッスンが開始される

ここで振り返って笑顔を用意しありがとうと言い

そこでしばらく記憶喪失になって自分の世界に戻る

未来に思いを馳せようと過去に後ろ髪を引かれようと

クロージングは誰もが心そこにあらずの遠い目

愛着と執着を混同しないエトランジェは

物欲で済むものならそれで済ませようと腹をくくる

悲しい時は美味しいものを寂しい時は好きな場所へ

ムーミン谷のミイは自然体にいつも仏頂面だけど

思えば私たちは誰も必要としない大人なスナフキン

部屋の模様替えをして古い習慣や新しい予定に

自我の脅威から身を守るべく依存しながら生きていくのだ

 

Amazonで先日買ったスーツは静かに春風に揺れている

面接の連絡でパンクしそうな留守電が赤く点滅している

気を紛らわせる目的で捨てる時間はもったいない気がする