オニオンスープ |  My Place

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 書いて作って育てる日常の備忘録

目覚ましなしで起きた朝は調子がいいからではない

私が誰かの目覚ましになって背中を押す時計になるから

家族より先におはようを言うのは文字と画像のSNS 

昨日あいさつを交わした人はたぶんまだ暖かい布団の中

AIが相手だと思っているから時々返事は無色無臭だ

 

さりとておはよう世界 ロシアに大寒波が押し寄せて

人がどんどん死んでいき 私の心も萎えていく

気つけ薬はオニオンスープ お湯を注ぐだけの美味しいスープ

カフェインは取り過ぎると心臓に悪いらしいから

気分転換にオニオンスープ 少々お高いインスタントスープ

 

毎日朝から電車に揺られて仕事に行くわけじゃないけど

毎日一つ以上は何かしらやることは家にもあって

でも家にいるからって何でも上手にこなせるわけでもなく

いつしか毎日一緒の時間を過ごすのは年老いた家猫と

自分を退屈させないように知恵を絞って作ったマイブーム

 

あ私いま堕ちかけたと気づいてトイレに立って仕切り直して

毎朝の日課の入浴と消毒の今朝はどちらをすべきか考慮して

とりあえず家の中で一番小さな部屋を暖めて消毒の準備をし

ひと晩かけてパッドにしみ込んだ体液はバクテリアの死骸で

何かが腐った匂いではないけれど甘い匂いでもないわけで

 

暗闇にぱっくり開いた傷口をもう何週間か眺めているけれど

なんだか怖くて中をこじ開けて見たことはない自分の体だけれど

年末にお医者さんがああ筋肉が見えるああそういう風なんだと

ノズルで消毒液を流し込んで洗ってくれたこともあったけれど

私は時おり空気でべこべこ鳴るこの奇妙な傷口からリンパ液を搾る

 

片手で傷口に脱脂綿を当てながらもう片手で傷口の周囲を

時々かってにべこべこ音を立てるからまるで話をしてるような

でも油断していると私に高熱をもたらす地雷みたいなこの傷口と

人生の終焉のような静かな嘆きを呈する傷口の上のケロイドと

半時間ほど向き合うのだむっとするほど暖房の効いた小さな部屋で

 

これが終わったらオニオンスープを飲むのだ 体の芯まで温まる

戦場でもないのにこうやってひとり傷の手当てをしているなんて

そりゃ傷の消毒に毎日病院通いじゃ家計の負担も大変だけれど

ひと晩寝かせたリンパ液はねっとりと異臭を放ち私を不安にさせる

誰にも見せられない傷だけれど誰も気づくことすらないだろう

 

レモンを絞るように絞れるわけじゃなく周囲から傷口に押し寄せる

何度か途中で空気が入って変な合間にべこべこと滑稽な音を立てる

お世話が必要な何か厄介な生き物みたい ほら美味しいスープだよ

 

とくとくとくと流れて行きな 胃袋経由で流れて行きな