父は今マンションに住んでいるが、
いつも鍵をかけない。
寝ている時でも、常にオープン状態。
本人曰く「大事な物がないから大丈夫だ」
この鍵をかけない習慣に拍車がかかることが起きた。
2017年9月16日、ドアロック事件が発生した。
この日は土曜日だった。
いつものように、父を訪ねて別れる時、
「じゃ、またね」とエレベーターで父が私たちを見送った。
その後、父は自分の家に入れなくなってしまったようだ。
いつも鍵をかけないのに、玄関は鍵かかった状態。
お隣さんは留守。
マンションの一階にお茶屋さんがある。
父は一階のお茶屋さんに行き、鍵開け業者に電話してもらった。
そこで約一時間滞在。
その後は部屋がある階に戻り、業者が来るまであと4時間。
夕方に近づくにつれ、気温がどんどん下がる。
上は肌着、下は下着姿。
父は一人で廊下の隅でうずくまり、泣いていたそうだ。
16時ごろ、やっと業者が来て、ドアロックを外してもらい、父帰宅。
このことで、しばらく落ち込んでいた。
ヘルパーの方に何度も
「早く死にたい」と言ったそうだ。
ただ、謎なのだ。
なぜ、鍵をかけていないのに、ロックがかかったのか?
考えられる原因は一つ。
父が取り付けてあったひもを
外から引っ張ったから。
父が風通しをよくするのに、時々、ドアを少しだけ隙間を開ける。
ひもというのは風が強く吹いていても、
廊下に向かってドアがバーンッと開かないようにするくさりみたいな物。
あの日、父は私たちを見送った後、
なぜか外から、このひもを引っ張ってしまった。
そして、うまい具合にロックがかかってしまった。
あれからは一緒に外出するたびに、
「鍵かけないで」
と言ってくる。
「(私の)大事な物を置いているから」と言うと
「それなら持って出ろ」
「鍵かからないよね?」と
何度も玄関ドアを開けたり閉めたりと確認もする。
今は出かける時は父を先に行かせてから、
そっとか鍵をかけるようにした。
それから、父を訪ねて、エレベーターで別れた後、
一階まで下りないで、また父の階に戻ってくる。
父がちゃんと家の中に入ったかを確認するためだ。
トラウマになってしまったが、
認知症の父が人に助けを求める行動に出たのが、
父なりに危機を脱するために考えたこと。
火事場の馬鹿力というやつかもしれない。
ちなみに、鍵開けの出張代金は36720円也。